原沢、涙の復活V 休養明けやっと「安心感」2年連続世界切符

[ 2018年4月30日 05:30 ]

柔道・全日本選手権 ( 2018年4月29日    日本武道館 )

優勝した原沢は畳の上で涙
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 16年リオデジャネイロ五輪100キロ超級銀メダリストの原沢久喜(25=日本中央競馬会)が、決勝で2連覇中の王子谷剛志(25=旭化成)を9分16秒の熱戦の末に反則勝ちで破り、3年ぶり2度目の優勝を果たした。昨年はオーバートレーニング症候群で一時休養したが、年明けから本格的に練習再開。五輪後の個人戦初優勝で復活を果たし、2年連続で世界選手権(9月、バクー)代表にも選出された。

 原沢が泣いた。「一つは結果が出ず、もがいて苦しかったので安心感の涙。もう一つはJRAで最後の試合だったので」。絶対王者リネール(フランス)を追い詰めた男が、五輪後は心身共に苦しんだ。ようやくの復活にも「全体的に見て内容は課題ばかり」と反省したが、気力を振り絞り頂点に立った。

 準決勝は7分35秒の熱戦。わずか10分後に始まる決勝で、体力的に不利なのは明らかだった。「正直、立っているだけでキツかった」。王子谷戦のために用意した作戦は「やる体力もなかった」が、がっぷり四つに組んで技を出し、徐々に相手の体力を削った。

 延長3分58秒、指導2ずつで並ぶと、その後は何度も前に崩して形勢逆転。延長戦で15回あった「待て」で、常に先に戻って直立不動だったのは原沢。「あまり記憶にないけど、とにかく勝ちたいという気持ちだけでした」と振り返った。

 体調の異変を感じたまま臨んだ昨年の世界選手権は初戦敗退。階段を上るだけで息が上がる。医師から下された診断は「オーバートレーニング症候群」。1カ月間は完全休養し、練習再開は散歩から。現在でも五輪前の稽古量の「8割くらい」というが、その分、質を高めた。カウンセリングにも通い気持ちも整理。その上で出した目標は20年東京の金メダル。今月いっぱいでのJRA退社も、そのための答えだった。

 5月1日からは「プロ」として24時間、柔道と向き合う生活が始まる。「2年間だけですけど、柔道に人生を懸けてやりたい」。54年前の東京、最重量級で逃した五輪金メダルは日本の悲願。原沢は大きな期待を背負う覚悟を固めている。

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2018年4月30日のニュース