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「2連覇おめでとう」パレード〜目線の略奪王にオレはなる!(2)

沿道に旧知のカメラマンの姿を見つけ手を振る羽生結弦選手(撮影・長久保 豊)
Photo By スポニチ

 【長久保豊の撮ってもいい?話】パレードが進む東二番町通りに面したビルの4階がわれわれの秘密基地だった。前日深夜、ここにスポニチ写真部の精鋭が集まってそれぞれの持ち場を決めた。10万人を超える観客の中を進む隊列、それを確実に絵にするのならここから撮影するのがベスト。

 「部長!ここで撮って下さい」。背筋がぞくっとした。日ごろから役職で呼ばれたことなどない私である。忖度にまみれた言葉の裏側に何があるのか。人の度量をはかろうというのか、それともオレの後を狙っているのか。「いやあ、この場所を見つけたデスクのキミが入りたまえ」。

 「部長こそ」。「デスクのキミが」。新緑の杜の都で繰り広げられたドス黒い密談は「それならボクが」と名乗り出た小海途良幹カメラマンに「どうぞ、どうぞ」とダチョウ倶楽部的な結末を迎えたのだった。

 眠れないまま朝を迎える。私の持ち場はスタート前のセレモニーとパレードの出発風景。報道受け付けには順番待ちの脚立がすでに数脚置いてある。1番乗りは午前4時。後は三々五々のいつもの面々だ。昼過ぎにはパレード車に乗り込む赤いオフィシャルベストのカメラマンも現れギンガムチェックの男とヒソヒソやっている。耳をそばだてていると「みずほ」だとか「銀行の前」という言葉が頻繁に聞こえてくる。まさか銀行を襲うことはあるまいが、よからぬ企みであることは間違いない。一枚かませてもらおうか。とにかくスタート直後のみずほ銀行前で何かが起こると、私の直感が言っていた。

 セレモニーを終え、ギンガムチェックの男が動いた。彼をマークすべく私も走った。何かが起こるみずほ銀行前へ。報道スペースに到着すると迷わず男の右横に陣取った。パレードはスタートし、隊列が近づいてくる。その時、ファインダーの中では信じられない光景が展開されていた。パレード車に乗った赤いベストの男の口が「ギンガム、ギンガム、田中さん」と動くのと同時にあの羽生さんが真っ直ぐの視線を向けてこちらを指さしているのだ。

 こ、これは。着弾点の半径5メートルを真空状態にするという羽生さんの指さし砲ではないか。昨年のアイスショーでは被弾したファンが口をパクパクさせているのを何度も見た。危険だ。そして次の瞬間には「いた!いた!」と叫びながら史上最高の結弦スマイルを浮かべて全力で手を振ってくる。

 オレ、そんなに仲良かったかな?もしかしたら名前ぐらいは覚えてもらっているかも、ってレベルのはずだ。マークしていたギンガムチェックの男はカメラマン業務を停止して手を振り返している。ああそうか、このはっちゃけぶりは彼に向けてのものなんだ。でもこんなに素敵な笑顔が撮れるなら目線泥棒と言われたっていい。ギンガムチェックの田中宣明さんにでも、赤いベストの能登直さんにでもオレはなる。

 いい写真、いい笑顔が撮れた興奮、感動。小海途と忖度デスクを仙台に置き去りにしたままであることに気がついたのは帰りの新幹線の中だった。しかも大宮駅あたり。(写真部長)

◆長久保豊(ながくぼ・ゆたか)1962年生まれ。帰京後、パレード映像を見たという人から声を掛けられた。まだまだ走れる、まだまだ行けると思っているが、まぶたの縦じわが気になる56歳。

[ 2018年4月27日 10:00 ]

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