W杯公認キャンプ地の上富田町 実は知られざるラグビーのメッカだった

[ 2018年4月26日 12:30 ]

人工芝(手前)、天然芝(奥)、屋内練習場(右奥)のグラウンドを備えた上富田町スポーツセンター。他にもう1面、天然芝のグラウンドがある
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 20日に発表されたラグビーワールドカップ(W杯)の公認チームキャンプ地で、異彩を放つ町がある。内定した59の自治体の大半が「市」という中、和歌山県の上富田(かみとんだ)町が選ばれた。8月決定予定のアフリカ地区代表が、人口1万5000人ほどの山あいの地でW杯直前合宿を行う。

 和歌山とラグビー。

 世間的に馴染みが薄いことを、同町教育委員会生涯学習課主事の瀧本拓哉さん(31)は素直に認める。

 「和歌山はラグビー不毛の地なんです。高校は10校ほど(昨年度の全国高校選手権和歌山大会は11校参加)で、大学、社会人チームの強豪はありません。だけど、自分が一番自信があることということで、ラグビーに力を入れています」

 太い上腕部分をのぞかせながら、公認キャンプ地に選ばれたことに誇らしげだ。御所工(現御所実)2年時に花園に出場したラガーマン。WTBとして活躍した。龍谷大、三菱自動車を経て母校のコーチに就任。高校の恩師、名将・竹田寛行監督の勧めで、15年に国体開催を控えていた同県の強化選手(成年男子=7人制)として再びユニホームに袖を通した。3位で終え、上富田町の職員になった。

 この国体に向けて、元日本代表のフッカー水山尚範さん、東芝のWTBだった吉田大樹さんといったトップ選手も県の強化選手になっていた。国体後、水山さんは県職員、吉田さんは県教員として和歌山に残る。瀧本さんを加えた3人と、同県熊野高校の顧問の瀬越正敬さんら元々の和歌山ラグビー熱がシンクロして、上富田町は新しいラグビーどころとしての道を歩み始めた。

 近年、近鉄、NTTドコモ、日野自動車、NTTコミュニケーションズが合宿を開催。高校日本代表候補合宿、7人制日本代表合宿、女子15人制、7人制日本代表もキャンプを張っている。元トップリーガーが持つ人脈が人を呼び、瀧本さんの奮迅の働きがリピーターを作った。

 元より施設はいい。天然芝2面、人工芝1面、屋内練習場もある。最新のトレーニング施設も完備だ。温泉で有名な白浜町の隣町のため交通アクセスには長時間の移動が伴うが、その分、「静かで練習に集中できる環境です。温暖でもあります」と瀧本さんはアピールする。

 評判は口コミで広がって、高校、大学を含めたラグビー合宿地としてこの数年、認知されるようなった。瀧本さんは、高校が50校近くが集まるラグビーフェスタの開催も実現させた。上富田町は、実は知られざるラグビーのメッカなのだ。様々な実績を作ったことが、W杯キャンプ地内定につながったと見られる。

 意外に思われたラグビー不毛の県のキャンプ地としてのW杯参加。しかし、見えてきたのは人のつながりと、競技を広め、根付かせたいと願うラガーマンの情熱だった。

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