アーメンコーナーの元ネタはジャズ!?その意外な由来は…

[ 2018年4月4日 13:30 ]

マスターズのメディアセンターに飾られたウインド氏の記事
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 オーガスタ・ナショナルGCの最深部にある「アーメンコーナー」。吹き溜まった風が渦巻き、左側に流れるレイズ・クリークがミスショットをのみ込む。ここで数々のドラマが生まれてきた。

 “神に祈るしかないほど難しい”というのが名称の由来としてよく語られるが、これはかなり意訳というか俗説のようなものだ。実際の成り立ちは少し異なっている。

 命名したのは米国人スポーツライターのハーバート・ウォーレン・ウインド氏である。「運命のコーナー(The fatal corner)」と題した1958年のスポーツ・イラストレイテッド誌の大会記事で、何かが起こる11番からの3ホールに言及。初めて「アーメンコーナー」と表現した。

 この年の大会ではアーノルド・パーマーが初優勝を飾った。ただし12番ではボールの処置をめぐるドタバタがあり、13番ではそれにもめげずにイーグル。試合を決定づける場面となった。

 いつもドラマを巻き起こす勝負どころを言い表すにはどうしたらいいものか。1984年発行の米ゴルフダイジェスト誌でウインド氏が述懐している。「(聖書の)四騎士や、(ヤンキースタジアムの)ルースの建てた家みたいに洒落た名前をつけなきゃと思ったんだ」。頭を悩ませ、思い浮かんだのは、学生時代に聴いて印象に焼き付いていたジャズのタイトル「Shouting in the Amen Corner」だった。1930年代にスイングの女王と呼ばれたミルドレッド・ベイリーによるダンサブルなナンバー。今はYouTubeで聴くこともできる。

 昨年新設されたメディアセンターには、ウインド氏の貢献を示すように当時の記事が額入りで飾ってある。アーメンコーナーの名はすっかり定着し、由来や命名者など特段気にすることもない。後年ウインド氏も若い記者から由来を尋ねられ、自分が命名者だと明かし、曲の説明をしたところ、がっかりされてしまったという。ライター仲間には「そりゃそうだ。音楽プロデューサーやジャズライターでもなければ、どれだけの人がその曲を知っていると思う?」となぐさめられたとも語っている。

 歌は世に連れ、言葉も世に連れ。だとすれば、神に祈りたくなる3ホールというのもドラマチックで悪くはない。ウインド氏も嫌がりはしないはずだ。オーガスタの森の奥のあの3ホールで、今年もきっとドラマは起こる。(雨宮 圭吾)

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2018年4月4日のニュース