貴親方 3カ月で協会No・3から平年寄降格…序列83番目に

[ 2018年3月30日 05:30 ]

国技館から戻った貴乃花親方は無言で部屋に入った
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 貴乃花親方(45=元横綱)が“一兵卒”として再出発する。日本相撲協会は29日、東京都墨田区の両国国技館で理事会を開き、貴乃花親方を委員から年寄に2階級降格処分とした。春場所で無断欠勤を続けたこと、弟子の十両・貴公俊(20)による暴行問題の監督責任などを問われた。協会No・3から序列83番目へ、わずか約3カ月足らずで5階級降格となった平成の大横綱は、ゼロからスタートする決意を表明した。

 会議室に呼び出された貴乃花親方は、八角理事長(元横綱・北勝海)から2階級降格を言い渡され、静かに頭を下げた。同席していた芝田山広報部長(元横綱・大乃国)は「本人は“分かりました”と言っていた」とその際の様子を説明した。1場所の出場停止処分を受けた弟子の貴公俊とともに、神妙な面持ちで退室した貴乃花親方は、江東区の貴乃花部屋に戻ってから文書でコメントを発表した。

 「新たな気持ちで大相撲発展のために精進し、真摯(しんし)に処分を受け止め、鍛錬に励むことを貴公俊と二人で話しております。今後は自分に与えられた職責を果たし、弟子の育成と大相撲の発展のためにゼロからスタートして参ります」

 異例の“格下げ”だ。横綱経験者の年寄降格は、年寄名跡の金銭問題に絡んで委員から2階級降格となった85年の元花籠親方(元横綱・輪島)以来。また、昨年12月の理事会で役員待遇への降格が決まるまで貴乃花親方は協会No・3の巡業部長だったが、約3カ月で実に5階級の降格。協会内の序列も100人いる親方衆の83番目と大幅にダウンした。

 処分の理由は2つ。弟子の暴行行為の監督責任と春場所の“勤務態度”だった。八角理事長は初日に“無断欠勤”したことに加え、再三の出勤要請を無視したことを「協会の職務専念義務に違反していた」と問題視したことを明かした。ただ、場所前に内閣府に告発した件は処分の対象に入れなかった。

 前日の年寄総会では、解雇に相当する契約解除を求める厳しい声も一部で上がっていた。しかし、理事会ではそうした意見は「ありませんでした」と八角理事長。その上で「年寄総会での親方たちの意見や貴乃花親方の発言を加味して(処分を)決めた」と説明した。

 新職務の審判は通例、委員以上の役職者が務めるが、貴乃花親方は12年に就任した東関親方(元幕内・潮丸)以来の平年寄の審判となる。文字通り“一兵卒”からの再出発だ。八角理事長は「これから真面目に仕事をしていただいて、組織人として改めてもらえればと思っている」と話した。昨年11月の元日馬富士の傷害事件発覚から約4カ月半。相撲界の一連の混乱は収束へ向かう。

 ▽花籠親方の降格 第54代横綱・輪島は、師匠の花籠親方(元幕内・大ノ海)の娘婿だったこともあり、81年春場所中に引退して花籠部屋を継承。82年2月から委員として指導普及部に在籍した。同年4月に夫人が自殺未遂を起こし、世間を騒がせたとして2階級降格で年寄となった。83年2月から委員に復帰して審判部に配属されたが、85年11月に年寄名跡「花籠」を実妹の経営する料亭の借金の担保にしていたことが判明。九州場所中の謹慎に加え、再び委員から年寄に降格した。同年12月、日本相撲協会を退職した。

 【貴乃花親方を巡る騒動の経緯】
 ☆17年10月25日 元日馬富士が貴乃花親方の弟子の貴ノ岩に暴行
 ☆11月22日 親方が、日本相撲協会危機管理委員会による貴ノ岩聴取への協力要請を拒否
 ☆12月25日 親方が危機管理委の聴取を受ける
 ☆28日 臨時理事会で親方の理事解任決議
 ☆18年1月4日 臨時評議員会で理事解任が決定
 ☆2月2日 理事候補選挙で落選
 ☆16日 不祥事再発防止の研修会を欠席
 ☆3月9日 貴ノ岩の春場所出場を明言。理事会、年寄総会を欠席。内閣府の公益認定等委員会に告発状を提出したことを表明
 ☆11〜14日 春場所会場に姿を見せず欠勤
 ☆15日 会場内の役員室に初めて入ったが3分弱で退室
 ☆18日 弟子の十両・貴公俊が支度部屋で付け人の力士を複数回殴打
 ☆19日 協会の臨時役員会合で弟子の暴行問題を謝罪。初の出勤扱い
 ☆28日 臨時年寄総会で一連の言動を謝罪。内閣府への告発状を取り下げ。新職務は1階級降格の委員で審判部に配属
 ☆29日 理事会で年寄へ2階級降格処分

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2018年3月30日のニュース