荒れに荒れるサンウルブズの練習場、割を食う選手…望まれる抜本的改善

[ 2018年3月24日 10:30 ]

建設中のオリンピックアクアティクスセンターに隣接する辰巳のグラウンド。芝状態は悪化の一途をたどっている
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 見る度に骨組みが密になり完成に近づくオリンピックアクアティクスセンターと、反比例するように荒れに荒れて土があらわになるグラウンド。これが今、スーパーラグビーの参戦するサンウルブズが拠点とする東京・辰巳の森海浜公園ラグビー練習場(以下、辰巳)の現状だ。

 2月前半は別府、北九州でキャンプを張ったサンウルブズだが、2月13日以降の練習は、20年東京五輪の水泳競技が行われる新規施設の隣にある辰巳で行われている。過去2年よりもサンウルブズとしての使用期間が長いこと、サンウルブズの海外遠征中にも将来の日本代表候補の合宿(NDS)が行われたことが影響してか、例年以上に芝の状態が良くない。21、22日には千葉県船橋市にあるトップリーグ・クボタのグラウンドを間借りして急場をしのぐほど、状況は悪化の一途をたどっている。

 今月上旬には日本協会の幹部が視察に訪れ、芝の状態をチェックしていた。そんなシーンはシーズンが深まるに連れて荒れる秩父宮ラグビー場でも何度も目にしているが、芝の張り替えなどを行うための手順は、秩父宮以上にハードルが高い。日本スポーツ振興センター(JSC)が所管する秩父宮は、いわば横のやりとりで張り替えを依頼できる。実際に昨年11月には、張り替えたはずの芝の状態が良くなかったため、日本協会がやり直しを依頼し、実現している。結果として、あまり改善は見られなかったが…。

 一方の辰巳は東京都(東京都港湾局)の所管。元々は日本協会が整備して都に移管しているとはいえ、持ち主の許可なしには手を付けられない。日本協会は芝の張り替え、元々簡素で老朽化も進むクラブハウスの改築、サンウルブズがプレハブを設置しているトレーニングルームの常設化などを含めて都に陳情している。東京五輪開催時には7人制ラグビーの練習施設として使用される予定で、それまでには多少の再整備はされるだろうが、それでは遅すぎる。

 当然ながら、割を食うのは選手たち。トップリーグを上回るレベルのリーグを戦いながら、練習環境はそれ以下という状況を強いられている。試合強度や移動の負担などが語られるスーパーラグビーだが、必要最低限の拠点で世界最高峰の舞台へ打って出ざるを得ない。そんな状況が、もう3年も続いている。

 こんな話がある。参入1年目の16年、シーズン前にチームサイドが選手に伝えたのは、練習拠点を東京都下にあるサントリー、東芝、キヤノンの3つのグラウンドとし、持ち回りで間借りするというプラン。日本代表歴代最多98キャップを保持するロック大野均(東芝)は、移動手段を確保するため、数十万円の中古車を購入したという。しかしその後、サンウルブズと3チーム側の折り合いが付かなくなり、練習拠点は辰巳に置かれることになった。心の広いキンちゃんは「まあ、休みの日に乗るので」と話したが、あの時の苦笑いは忘れられない。チームの迷走が選手個人の身銭を切らせる。こんなことは、本来あってはいけない。

 20年からはトップリーグも大きく様変わりし、年明けから夏にかけて開催される。同時期に開催されるスーパーラグビーのサンウルブズが、今回のようにトップリーグのグラウンドを間借りするのは、ますます難しい状況となる。そうでなくても、日本代表にすら東京都内に拠点と呼べるグラウンドが存在しないのが現状。東京五輪後の新秩父宮ラグビー場構想とともに、足場といえる練習拠点の抜本的な改善が望まれる。(阿部 令)

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2018年3月24日のニュース