貴ノ岩 再出発1勝!傷害事件から136日、十両で半年ぶり出場

[ 2018年3月12日 05:30 ]

大相撲春場所初日 ( 2018年3月11日    エディオンアリーナ大阪 )

翔猿(手前)を破って172日ぶりの白星を挙げた貴ノ岩
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 元横綱・日馬富士(33=本名ダワーニャム・ビャンバドルジ)の傷害事件で被害者となった西十両12枚目の貴ノ岩(28=貴乃花部屋)が、昨年秋場所以来3場所ぶりに復帰した土俵で白星発進した。落ち着いた取り口で東十両13枚目の翔猿(25=追手風部屋)を寄り切り。傷害事件による頭部の負傷で2場所連続全休を強いられたが、172日ぶりの勝利で復活を印象づけた。

 待ち望んだ本場所の土俵。貴ノ岩は168日ぶりの土俵入りで「頑張れよ」などの大声援を受けた。復活勝利を挙げると、さらなる歓声に加え、温かい拍手が送られた。だが、傷害事件の被害者は喜びを押し殺すかのように、支度部屋では淡々としていた。復帰の心境や相撲内容について質問を浴びても「一生懸命やるだけ」「必死だった」という言葉を繰り返した。

 14場所ぶりに上がる十両の土俵で、格の違いを見せた。左足から踏み込み、初対戦となった翔猿の動きを止めた。もろ手から押し込まれても、余裕十分にいなした。バランスを崩した相手に右を差すと、一気に寄り切った。約5メートルも吹っ飛ばされた翔猿は「強いですね」と舌を巻いた。

 師匠の貴乃花親方(元横綱)が最も心配していたのは、傷害事件で負った貴ノ岩の頭部のケガだった。「(関取衆と)稽古をして当たりどころが悪ければ痛めてしまうかもしれない」と京都府宇治市の貴乃花部屋宿舎に入ってからも、しばらくは相撲を取る稽古をさせなかった。申し合い再開は初日の4日前の7日。本人の意思を尊重して出場を認めた師匠は「相撲人生を懸けるぐらいの気持ちでいくしかない」との思いで愛弟子を送り出した。

 昨年10月26日に頭部を負傷してから136日。この日の立ち合いは胸から当たった。頭部についての質問には無言だったように、不安が拭い去れたわけではない。そんな状況でも、復調に向かっているのは確かだ。場所前に貴ノ岩の稽古を見た貴乃花一門の千賀ノ浦親方(元小結・隆三杉)は、審判員として貴ノ岩の相撲を見届けた。「この日の相撲を見る限り、良くなっている。慌てていないし落ち着いて取っている。四つ相撲で基礎ができているし(白星発進で)気をよくしていくのでは」と話した。騒動が明らかになってから、常に貴ノ岩の体調を心配してきた八角理事長(元横綱・北勝海)は「あまり騒がないでやってほしい。周りが騒ぐと本人が大変になる」と要望した。

 師匠の貴乃花親方は、傷害事件を巡る日本相撲協会の対応に問題があったとして、内閣府の公益認定等委員会に告発状を提出した。騒動は完全決着したと言えない中で、貴ノ岩の復活ロードが始まった。

 【貴ノ岩復帰まで】
 ▼17年10月26日 未明の鳥取市内の飲食店での酒席で、日馬富士から暴行を受けて頭部を負傷。同日の鳥取市での秋巡業には参加。
 ▼29日 広島県福山市の興行で秋巡業が終了。貴ノ岩は取組から外れ、巡業終了後に鳥取県警に出向き、被害届を提出。
 ▼11月5日 福岡市内の病院に入院。
 ▼9日 退院。
 ▼10日 休場が発表される。
 ▼13日 九州場所2日目に診断書提出。
 ▼12月19日 日本相撲協会危機管理委員会の聴取受ける。
 ▼20日 聴取した高野委員長が「どうしてこのような仕打ちをするのか理解できなかった」などの聴取内容を公表。
 ▼26日 初場所番付発表。幕内から十両に陥落。
 ▼18年1月12日 診断書を提出して初場所の休場決定。
 ▼2月26日 春場所番付発表。特例措置で十両にとどまる。この日から公の前で初めて稽古再開。
 ▼3月1日 朝稽古を終え、騒動後初めて公の場で取材に応じる。
 ▼8日 貴乃花親方と話し合い春場所の出場が決定。

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