大砂嵐引退…勧告受け入れ届け提出へ 不誠実な対応を問題視

[ 2018年3月10日 05:30 ]

大砂嵐
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 日本相撲協会は9日、大阪市内で理事会を開き、2月に道交法違反(無免許運転)の罪で略式起訴されたエジプト出身の幕下力士、大砂嵐(本名アブデルラフマン・シャーラン、26=大嶽部屋)に対し、引退勧告処分を決めた。大砂嵐は師匠の大嶽親方(元十両・大竜)とともに理事会に出席し、処分を受け入れて引退することを決めた。相撲協会の危機管理委員会の聞き取り調査で虚偽の発言を重ねたことで、アフリカ出身初の力士は引退を余儀なくされた。

 相撲協会が大砂嵐に下した懲戒処分は、7段階の中で2番目に重い「引退勧告」となった。退職金は30%減額。理事会に出席した大砂嵐は反論することなく受け入れた。今後、9日付の引退届を提出する。報道陣との接触を避けた大砂嵐に代わり、取材に応じた師匠の大嶽親方は「この世界に入りたくて(日本に)来て、横綱になる夢を持っていたわけですから。(大砂嵐は)落ち込んでいます」と気持ちを代弁した。

 1985年に力士による交通事故が相次いだため、相撲協会は現役力士の自動車やバイクの運転を禁じた。2000年12月には闘牙が死亡事故を起こしたが、本場所の出場自粛と減俸処分にとどまった。07年4月に旭天鵬が起こした人身事故の際は「3カ月、30%の減俸、07年夏場所出場停止」。それよりも重い処分になったのは、大砂嵐の不誠実な対応によるものだった。

 危機管理委員会は3度にわたって大砂嵐の聞き取り調査を行ったが、危機管理部長の鏡山理事(元関脇・多賀竜)によると「(供述が)二転三転した」という。当初は「妻が運転していた」などと説明していたが、鏡山理事は「略式起訴を受けて、(相撲協会への)弁明がウソと分かった。ウソをつき続けたことを踏まえ、引退勧告とした」と説明した。

 アフリカ大陸から初の力士として12年春場所で初土俵。14年名古屋場所では5日目に鶴竜、6日目に日馬富士を破り、戦後初めて、横綱初挑戦から連続金星を挙げた。相撲界に足跡は残したが、土俵外の愚行が過去の栄光にも泥を塗った。

 ▽日本相撲協会の処分 賞罰規程の第3章「懲戒」に定められる。親方、力士ら協会員への処分は軽い順に「けん責」、「報酬減額」、「出場停止」、「業務停止」(協会事業への従事を停止する)、「降格」、「引退勧告」、「懲戒解雇」の7項目。なお、引退勧告後、速やかに引退届を提出しない場合は解雇に準じて取り扱う。懲戒解雇は退職金が支払われないため、さらに重い。なお、最も重い処分だった「除名」は、公益財団法人移行後、規程からなくなった。

 ◆大砂嵐金祟郎(おおすなあらし・きんたろう=本名アブデルラフマン・シャーラン)1992年2月10日生まれ、エジプト・ダカハレヤ県出身の26歳。16歳から相撲を始め、08年にエストニアで行われた世界ジュニア選手権無差別級3位。11年8月に来日し、大嶽部屋に入門。翌年春場所で初土俵。13年名古屋場所で新十両、アフリカ大陸出身として初の関取に。最高位は西前頭筆頭。通算勝利数238、うち金星3。幕内在位17場所。得意は右四つ、寄り、突き、上手投げ。1メートル89、160キロ。

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