女子パシュート金・佐藤綾乃父「俺の自慢の娘だ」親子二人三脚で歩んだ道

[ 2018年2月25日 06:00 ]

平昌冬季五輪 スピードスケート女子パシュート ( 2018年2月21日 )

スピードスケート女子の佐藤綾乃
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 【女子パシュート金・佐藤綾乃父が独占手記】パシュートで冬季五輪の最年少金メダリストに輝いた佐藤綾乃(21=高崎健康福祉大)の父で漁師の文則(49)さんが本紙に独占手記を寄せた。最終種目マススタートでは他国の選手と交錯して転倒する不運に見舞われたが、個人種目でも3000メートル8位入賞を飾るなど大健闘した。佐藤のスケートを一番近くで見てきた父が親子二人三脚で歩んだ幼少期を振り返りつつ、愛情たっぷりに育てた娘への気持ちをつづった。

 厳冬の漁は過酷だ。多少のシケなら沖に出る。雨も雪も関係ねえ。顔の感覚なんかなくなるから。何回も危険な目に遭った。沈没した仲間の船も見た。厳しい世界だ。学校がある日も早朝から浜で俺の帰りを待つ綾を見るのが励みだった。魚も平気で触り、船を駆け回った。氷水を用意して、サンマを発泡スチロールに詰める仕事も手伝ってくれた。汚いも臭いも言わない。男だったら跡継ぎだった。

 地元・厚岸町はカキが有名だけど本職はカニ漁だ。時期は1月中旬から4月。午前2時には出船する。丘の作業が終われば車を1時間運転して午後4時に釧路北陽高に着くのがパターン。綾を乗せてリンクに送り練習終了は夜の9時。家に帰るともう10時だった。カニが始まったらそんな生活だ。綾は俺の睡眠時間を心配してくれたけど、その声で頑張れた。仕事を手伝ってくれるかわいい娘。親子で助け合うことが大事だと思った。綾は俺の趣味でもあったから手塩に掛けた。

 化粧ベニヤにワックスいっぱい塗って毛糸で編んだ靴下を履かせた。完成したスライドボードを小屋に運んで、おまえやれって。道具はだいたい俺がつくる。スピード用のローラースケートをリサイクルショップで買って、靴の部分は取っ払い1シーズン前のスピードの靴とボルトで合体させた。中学からスピード靴の刃を研がせたけど見たらガタガタだった。連盟強化部の白幡圭史さんに「こんなの初めて見た」と笑われたけど、それで全国中学で準優勝した。道具はあまり関係ねえ。

 小学校は部活動が終わって家に帰ると俺がつくった改造自転車を1時間こいだ。小学校のマラソン大会は1位か2位。スケートの1万メートルは、男の子がギブアップしても綾は最後まで滑っていた。根性と体力があった。金かけてやるスポーツじゃないと思ったし、逆に言えば綾はたくさん伸びしろを残して巣立った。だから俺もびっくるするぐらい成長してるんだと思う。綾は俺の自慢の娘だ。(父・佐藤文則)

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