菜那、マススタート初代女王!日本女子初金2個「最高の五輪」

[ 2018年2月25日 05:30 ]

平昌冬季五輪 スピードスケート女子マススタート ( 2018年2月24日 )

<平昌五輪スピードスケート>女子マススタート、2個目の金メダルを手にかわいい仕草を見せる高木菜那
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 新種目のマススタートが行われ、女子の決勝で高木菜那(25=日本電産サンキョー)が団体追い抜きに続き今大会2つ目の金メダルを獲得した。同一大会での複数金メダルは夏季五輪も含め、日本女子史上初の快挙。冬季五輪の日本女子はこれまで、通算でも金メダルを複数獲得した選手はいなかった。この結果、妹の高木美帆(23=日体大助手)と合わせ、姉妹で今大会5個のメダルを獲得した。

 1メートル55の小さな主役は劇的な幕切れの瞬間、氷上を跳びはねるように喜びを爆発させた。個人種目5000メートルは12位で最下位。妹の活躍とは対照的にどん底からスタートしながら“脇役”が、驚がくの金メダル2連発で、一気にヒロインへと駆け上がった。金・銀・銅メダルをコンプリートした妹に劣らぬ勝負強さで歴史に名を刻み「美帆だけじゃなくて、菜那もいるんだぞというのを見せられたと思います」と胸を張った。

 歓喜の約1時間半前の状況から、誰がこの結末を予想できただろう。1回戦2組で佐藤綾乃(21=高崎健康福祉大)が転倒して敗退。個人種目ながら日本は2人の「チーム戦」として捉えていただけに、団体追い抜きで金メダルを獲った仲間を失うのは想定外の事態だった。だが、決勝前に妹から「行けるぞ!」と闘魂を注入され、嫌な空気も一蹴する痛快なラスト1周で勝利をもぎ取った。最後の最後までスハウテン(オランダ)の背中で身を潜め、最終コーナーを出た瞬間にインから前に出る。体力を余すことなくアクセル全開でゴールを駆け抜けた。

 スケートとともに取り組んだサッカーでは小6で十勝地区を制して全道3位に入った。男子中心のチームに唯一、女子として名を連ねて守備で貢献。「菜那はボーッとするミスが多い」とコーチだった小田新紀氏(43)は明かすが、その一方で「菜那なら何とかしてくれる」と頼りにもしていた。DFラインを上げる際に1人残って失点するミスを犯したりもしたが、この日の勝因を高木菜は「サッカーをやって周りを見る力がついた」と話す。経験は夢舞台で生きた。

 帯広南商高2年の時、部活動の遠征で東京へ向かう飛行機の最前列に、赤いマフラーを巻いたアントニオ猪木氏が座っていた。機内でスケート部の仲間と盛り上がったが、羽田空港で友人たちが“スター”に近寄るのをためらう中「写真撮ってください」と申し出て記念撮影=写真。シャッターを押した東出監督が「大したもんだなあと思った。度胸はほんと凄いよ」と強心臓に感嘆したほどだった。

 日本のメダルラッシュに沸いたリンクの最後を締めた新種目の初代女王。「本当に最高の五輪になって良かった」と話す一方「個人種目ではまだ結果が残せていないので妹に追いつくぐらいの選手になりたい」。大舞台でも臆することのない強い気持ちが、平昌にこれ以上ないインパクトを残した。

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2018年2月25日のニュース