菜那、美帆とつかんだ9年越しの夢 妹への“嫉妬”を原動力に成長

[ 2018年2月22日 05:30 ]

平昌冬季五輪 スピードスケート女子団体追い抜き ( 2018年2月21日 )

表彰式に上がりスタンドの声援に手を振る(左から)高木菜、高木美、佐藤、菊池彩
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 先頭でゴールした妹の美帆に続き高木菜もこん身のガッツポーズを繰り出した。「試合前の円陣でコーチから“楽しんでこい”と言われた。そのおかげで(レースを)楽しむことができた」。個人種目の5000メートルは12位で最下位。必死に切り替えたが、前夜は緊張して口数が多くなる“異変”を妹に感づかれていた。それでもコーチの言葉で肩もほぐれ、今季世界新を3度更新した実力を夢舞台でも発揮した。

 高校2年の冬。妹のバンクーバー五輪用の公式グッズが北海道幕別町の自宅に届いた。うらやましくもあり、悔しかった菜那は後日、帯広南商の東出俊一監督に「火をつけてやろうかと思った」と打ち明けたという。一緒に飲食店に行けば、店員から「美帆ちゃんのお姉ちゃんなんだってね」と話しかけられ、すかさず「菜那です」と答える。身長は9センチ差。「妹?」とよく間違えられた菜那はスーパー中学生と呼ばれる妹を「嫉妬」していた。

 妹の応援のため向かったバンクーバー五輪。まぶしいほどの光を放つ妹を見た素直な気持ちは「転べばいいのに」だった。だが、転機が訪れる。ライバル視する妹が1000メートル35位で最下位。「世界にはこんなにたくさん速い人たちがいるんだな。私もこういうところで戦っていきたい」。妹だけを見てきた視野は広がり、夢を追いかけた。嫉妬心を力に変え、妹が逃したソチ切符をつかむ。「菜那が行けるなんて」と周囲を驚かせた。

 初めて姉妹で同時出場した五輪。年間300日を超える練習で、姉妹も最高のチームメートになった。「日本からの応援の力が自分たちの力に変わった。力を合わせた結果が金メダルに変わった」。一番高い表彰台に立った姉妹は視線を合わせ喜びを分かち合った。

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2018年2月22日のニュース