村田諒太、小平に感動 金メダリストは抜群の広報効果「競技の裾野広げて」

[ 2018年2月20日 11:00 ]

スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平
Photo By スポニチ

 【メダリストは見た】小平さん、凄かったですね。スピードスケートは生で見たことはないんですけど、感動しました。タイムでハッキリと結果が出る勝負で、開催国のライバルがいて、大会前から勝つと言われていて五輪新記録で金メダル。スタートでピクッて動いたじゃないですか。あれで全てが狂ってもおかしくない。素人目に見ても完璧じゃなかったスタートで勝ったんだから、本当に強かったとしか言いようがないです。驚かされたのは肌が凄くきれいだったこと。水分をしっかり含んでいないと、肌はどんどん荒れていく。コンディションの良さを感じました。

 小平さんは「記録会もW杯も五輪も名前が変わるだけ」とプレッシャーを気にしないようにしていたようですが、気にしているからこそ、そう思うわけです。見ないようにしていても、見えてきちゃうものなんですよ。五輪前の大会でいい成績を出していれば、周囲の期待と重圧はもちろん感じるし、調整などに支障が出ないわけがない。僕はそれをうまく処理できなかったけど、ロンドン五輪ではたまたま金メダルを獲れた。プロでも最初の世界戦で負けて、内容的に次は勝つだろうって期待されて、やっぱり緊張しました。2回経験していても、期待される立場で戦うというのは、自分だけでうまくコントロールできるものじゃない。

 先に1000メートルで金メダルを獲っておけば気が楽だったかもしれなかったのに、銀メダル。500メートルは絶対に獲らなきゃいけない、下手すれば一生金を獲れないという状況で勝てたのは、メンタルを含めて能力が高いからでしょう。みんな実力を100%出せばメダルを獲れるって言うけど、それは当たり前。100%なんて出せないし、出せないのが実力なんです。僕もロンドンの時に出せたのは60〜70%。前年の世界選手権と比べても全然ダメでした。小平さんも恐らく100%ではなかっただろうけど、五輪で勝つ力が100だとしたら105ぐらいの能力があったということ。獲るべくして獲ったんでしょうね。

 金メダリストになると見える景色が変わってきます。メディアに出たりして世界観が広がりますから。その際には自分自身で決断する「ありがたい試練」もあるでしょう。僕も裏切るような形で大学職員を辞めたりしたけど、選手にはもっと違うところで活躍したいという気持ちも出てきます。その場合は、いいことも悪いことも言ってくれる身近な人を大事にしてほしいですね。僕の場合はカミさんでしたけど、自分のことをよく分かっている人にアドバイスを仰ぎ、ベストの答えを出してほしいです。

 金メダリストは抜群の広報効果を持っているので、それを競技普及に生かすのもスケート界への恩返しになります。昔からのしがらみなどにとらわれず、金メダリストにしかできないことを大事にして、競技の裾野を広げてほしいです。4年後を目指すのは大変かもしれないけど、北京は日本と時差も少ないしスポンサーもつきやすい。できればあと4年競技を続けてもらってスケート界やスポーツ界、日本全体を元気にしてもらえればうれしい。それだけの力を金メダリストは持っているわけですから。

 ◆村田 諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良市生まれの32歳。南京都高2年で高校3冠を達成するなどアマ通算138戦119勝(89KO・RSC)19敗。12年ロンドン五輪ミドル級では日本勢48年ぶりとなる金メダルを獲得した。13年8月プロデビュー。17年10月WBAミドル級世界王者となった。1メートル83。右ボクサーファイター。

続きを表示

2018年2月20日のニュース