【黒岩敏幸 分岐点】“boze kat”小平31歳なお進化 想像絶する努力でつかんだ金

[ 2018年2月19日 08:10 ]

平昌冬季五輪 スピードスケート女子500メートル ( 2018年2月18日 )

金メダルを争った李相花(右)を抱き寄せる小平
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 空気抵抗を追求した低い姿勢で5位に終わった14年ソチ五輪。小平はその後向かった留学先のオランダで「boze kat(ボーズカット=怒った猫)」というニックネームの由来にもなったフォームを身に付けた。体を起こし尻を氷に向けて懐に空間をつくるフォームにモデルチェンジ。スポニチ本紙評論家の黒岩敏幸氏(48)が金メダルを獲得した小平の強さの秘密に迫った。

 小平の精神力の勝利だった。李相花の方が300メートルまでのタイムは速かったと思うが、第2カーブでミスが出て遅れた。小平はスタートで一度ピクっと体が動いて出遅れたものの、慌てることなく100メートルを10秒26の速いタイムで入ることができた。ミスがあっても自分の滑りに徹することができていた心の強さを称えたい。

 小平の速さのポイントはスタート姿勢だ。以前は全体的につぶれていたが、胸の位置が高く懐ができた。懐に空間があると足を動かしやすい。足首、膝、腰にある角度は、踏み込んだ反動でバネのように起きて力が上に逃げる。陸上100メートル走を見ても、速い選手は低い位置から徐々に体が起き上がる。浮き沈みを抑えてスケーティングに移行できる理想的な構えになった。

 以前はスタート直後に上体が浮いて、胸が前方を向いた。そうなるとスケーティングに移る際、体を倒す動きが必要になってくる。今季は胸が氷を向き、無駄なく移行しているのが分かる。13〜14年シーズンでの国内レースの100メートル通過は10秒6、良くて10秒4。これに対し、今季最速は10秒1。課題のスタートも世界トップクラスに成長した。

 100メートルではタイム以上に加速が重要だ。多少出遅れたとしても、100メートル通過でスピードが出ていればいい。しっかり加速できていることは成績が物語っている。

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2018年2月19日のニュース