小平、涙の“新女帝”!五輪新で金 羽生から「勇気もらった」

[ 2018年2月19日 05:30 ]

平昌冬季五輪 スピードスケート女子500メートル ( 2018年2月18日 )

日の丸を手にウイニングランをする小平
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 女子500メートルが行われ、同種目で24連勝中だった小平奈緒(31=相沢病院)が36秒94の五輪新で優勝した。スピードスケート日本女子の金メダルは、史上初の快挙。地元韓国の“女帝”こと李相花(イサンファ、28)の3連覇を阻み、日本に今大会2個目の金をもたらした。小平は1000メートルの銀に続く今大会2個目、自身3個目のメダル。これで日本の獲得メダルは10個となり、冬季五輪では98年長野の10個に並び最多となった。

 ずっと憧れてきた光景。それは自らの滑りに感動して歓喜を爆発させる客席の姿。最終組が滑り終えた瞬間、夢に見た景色が広がったが、小平の目には映らなかった。「涙でかすんで、ほとんど見られなかった」。スピードスケート日本女子初の金メダルが確定すると、号泣する李相花をギュッと包み込んだ。

 17日にフィギュアスケート男子シングルで羽生結弦が日本人最初の金メダルを獲得し、「勇気をもらって滑りにつなげることができた」と迎えた決戦。“日韓頂上対決”で会場は初の超満員。号砲が鳴るとアウェーの空気を切り裂くように100メートルは李相花に次ぐ2位の10秒26。「スタートすればあとは体が反応する」と体に染みこませた動きで加速し低地で女子初の36秒台をマーク。宿敵にプレッシャーを与え静かに時を待つ。決着がつくと涙は止まらなかった。

 女王の壁。五輪の重圧。連勝に周囲の期待も膨らむ。だが宿命とうまく向き合った。韓国に到着し「ベストを尽くせば何番でもいい」と話し、メダルに固執せず理想の滑りを追求。「記録会もW杯も五輪も名前が変わるだけ」。モットーの「日々、自分超え」に挑み続けたことで2年間無敗。それが夢舞台での爆発を生んだ。

 地元メディアから何度も李相花について質問され、ボランティアまでもが「ライバルなんでしょ?」と話し掛けてきた。だが対決には「勝ち、というより熱い戦いができれば」と冷静に対応。同じ問いかけに「その人と比較しないで!」といら立ちを隠さなかったライバルとは対照的だった。

 ソチ後はオランダに留学。「ソチ前はがむしゃらだった。ソチを終えていろんな経験を積んできて自分なりに思考回路も変わり、自分を客観的に見られている」と変化した。帰国して練習に導入した古武術を教わるびわこ成蹊大の高橋佳三教授からは「(ライバルが)いてもいなくても一緒、ただ自分の動きをするだけ」との言葉を授かり、宿敵は「自分を高めてくれる存在」と意識を変えた。異国で五輪5冠のブストと高め合い「不安もあるけど、周りに感じさせない振る舞いは参考になった」という。

 「(五輪を)考えないようにしたこともありました」。重圧から解放され、再び涙がこぼれる。だが、立ち止まらない。「タイムはまだまだ目指したいものがある。これがラストチャンスと思うのではなく、先にある目標を目指した結果の通過点」。そう思えたからこそたどり着いた前人未到のゴールだった。

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2018年2月19日のニュース