【岡崎真 分岐点】“頭脳”も鍛えてきた羽生 見せたミスへの高い適応能力

[ 2018年2月18日 09:05 ]

平昌冬季五輪 フィギュアスケート男子フリー ( 2018年2月17日    江陵アイスアリーナ )

表彰式の頂点にジャンプして飛び乗る羽生(撮影・椎名 航)
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 右足を痛めて氷に乗れない時期が長かっただけに、最後まで体力が持つのかどうか心配だったが、絶対に勝つんだという羽生の気力の方が勝った。金メダルにふさわしい見事な演技だった。

 冒頭の4回転サルコーと4回転トーループはSPの時よりさらに精度が上がり、ともにGOE(出来栄え評価)は満点。連続ステップはレベル3の判定だったが、以前と比べると静と動が融合しているような感じで、穏やかな曲調の中に力強さやしなやかさが見える、いいステップだった。

 ただ、前半に集中しすぎたのか、その辺から少しずつ疲れが見えるようになり、ほんのわずかだが呼吸も荒くなった。それでも4回転サルコーと3回転トーループの連続ジャンプを決めたのはさすがだが、次の4回転トーループからの3連続ジャンプは、着氷準備が間に合わない感じで回転を止めきれず、単独になってしまった。

 見事だったのはそこからのリカバリーだ。3回転半と2回転トーループの連続ジャンプを、とっさに1回転ループと3回転サルコーを付けた3連続に変更して成功させた。基礎点は14・74点で、GOEもプラス2・14点。もしここで3連続にしていなければ3回転サルコーの点数がまるまるなかったわけで、上位陣の僅差の勝負の中では非常に大きなリカバリーだった。

 恐らく日頃の練習でも、ここを失敗したらこっちで補うという練習がしっかりできているのに違いない。もともと羽生は非常にクレバーな選手で、状況に応じて臨機応変に対応できる能力が高い。4回転ジャンプはハイリスクハイリターンで、ある程度のミスは付きものだ。だからこそ、普段からミスをしても失点を最小限に食い止めるための訓練を繰り返し、瞬時に正しい判断を下せる頭脳を鍛えてきたのだろう。

 五輪の連覇は66年ぶりというから、今回の金メダルは本当に価値があると思う。4年前はトーループとサルコーだけだった4回転が、より難度の高いループとルッツを加えた4種類に増えた。結果的に今回は足の故障もあってソチと同じ2種類だけで臨まざるをえなくなったが、難しいジャンプも跳べるという余裕が自信につながり、その分、心にもゆとりができて点数にも表れた。

 宇野も冒頭の4回転ループで失敗したものの、そこで崩れることなく、最後まで集中力を維持して滑りきった。銀メダルは十分に評価していい。2人のワンツーフィニッシュをずっと願ってきただけに、本当に実現して私自身も感謝の気持ちでいっぱいだ。 (ISUテクニカルスペシャリスト、プロコーチ)

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2018年2月18日のニュース