沙羅 涙の銅から一夜、充実笑み 22年北京で「今度こそ金」

[ 2018年2月14日 05:30 ]

平昌冬季五輪 ジャンプ女子個人ノーマルヒル

平昌冬季五輪・スキー女子ジャンプメダルセレモニーで銅メダルを手に笑顔の高梨
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 女子ジャンプで銅メダルとなった高梨沙羅(21=クラレ)が13日、五輪スタジアム近くの屋外会場「メダルプラザ」で行われたメダル授与式に出席した。まさかのメダルなしに終わった前回の屈辱を乗り越え、前夜は日本女子ジャンプ初の五輪メダルを獲得。金メダルは持ち越しとなっただけに、日本のエースは22年北京五輪での悲願達成を誓った。

 手のひらを重ね合わせ、首から下げたメダルをその上に乗せた。まるで卵を守るかのように優しく。大掛かりな授与式で初めて手にした五輪メダル。「この4年間積み重ねてきたものは本当に無駄じゃなかったんだ。報われた気分になった」。高梨にとってかけがえのないメダルだった。

 4年前の競技翌日は最悪の気分だった。金メダル最有力と言われながら4位。一夜明けて家族に会うと不安を吐き出した。「私は非国民だから日本に帰れないかもしれない。非国民と言われて空港で皆の前に顔を出せない」。傷心で眠れない夜に心ない書き込みを見たのだろう。17歳の心はぐしゃりとつぶされていた。

 だが帰国した空港で待っていたのは予想外の温かい出迎えだった。数々の激励の手紙も届いた。年配の女性から「沙羅ちゃんの頑張りを見て生きようと頑張ることができる」と感謝もされた。「ここで終わるわけにはいかない」。そこから平昌への挑戦が始まった。

 ライバルのイラシュコ(オーストリア)が高梨の圧倒的強さを「もしかしたらアンドロイドじゃないか」と形容したことがあった。だがこの4年間で経験と年齢を重ね、高梨はぐっと“人間的”になった。視野を広く持ち、周囲を気遣う。いつも話題になるメークもその一環だった。

 平昌入りしてからはよく笑っていた。女子ジャンプの先駆者で、高梨が敬愛する山田いずみコーチも「顔がいい。ソチの時の顔よりも私は今の顔が好きだよ」と声を掛けたという。空港、開会式、練習、そして本番の1回目と2回目の間でさえも笑顔で観客席に手を振った。初五輪で思い詰めたような4年前とは違っていた。

 1回目はソチ五輪と同じ3位。前回はそこから失速し、今回は「ここに来て一番いいジャンプだと瞬間的に分かった」。着地した瞬間に両手を突き上げ、伊藤ら仲間の祝福を受けた。「抱き寄せてもらえた時にホッとして涙が止まらなかった」。五輪の呪縛がその瞬間にようやく解けた。

 「目標は金メダル。今度こそ金を獲りたい」と北京を見据えて帰国の途に就く高梨。4年前は恐怖心でいっぱいだった。今回は違う。メダルがある。胸いっぱいの充実感がある。何より最高の笑顔とともに日本へ帰る。

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