沙保里、決勝前日に旗手務めた葛西に敬意「真のチャンピオン」

[ 2018年2月10日 11:00 ]

平昌冬季五輪開会式 ( 2018年2月9日 )

レスリングの吉田沙保里
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 【メダリストは見た】極寒の平昌で熱戦の火ぶたが切られた。世界最高のアスリートたちが、ただ一つの頂点を目指して競い合う4年に一度の冬の祭典。今大会でも五輪のスポニチ紙上を飾る名物連載が始まります。メダリストならではの視点で五輪の裏の裏を語る17日間をお楽しみください。初回は五輪4大会連続メダルの最強女子、レスリングの吉田沙保里(35=至学館大職)です。

 いよいよ始まりましたね〜。8日にはスキージャンプの予選、この日の午前中にはフィギュアスケートの団体がありましたが、やはり開会式を見て、本当に始まるんだなと実感します。日本の選手も、みんないい表情をしていました。特に高梨沙羅ちゃん、いい笑顔でした。旗手の葛西さんは8日に予選をこなして、明日(10日)には決勝がある。大変ですけど、さすがベテランだと思います。こういうことをこなしてこそ、真のチャンピオンなんだと思います。

 私は五輪に4回出場していますが、開会式に出たのは初出場だった04年のアテネ大会と、旗手を務めた12年ロンドン大会の2度。一昨年のリオデジャネイロ五輪は主将を務めさせていただきましたが、開会式には出てなかったんですよ。

 テレビで見ていると華やかな開会式ですが、実際に出てみると…実は印象が違います。選手は何が何だか分からない状況の中で自分たちの入場のタイミングを待たされています。次、ジャパンだよーっと呼ばれたら、スタジアムに入っていく感じですね。とにかく笑顔で!というのはよく言われてました。

 今回の五輪はとにかく気温が低く、選手は大変だと思います。夏季五輪は暑い寒いという苦労はないけど、何時間も立ったまま待たされるのは大変でした。あくまで本番は自分の競技。体力を消耗したくないというのがアスリートとしては本音だと思います。閉会式はプレッシャーから解放され、みんなで写真を撮ったりわいわい楽しい雰囲気ですが、そういう意味で開会式はあまり楽しい思い出はないですね(笑い)。

 楽しみにしてる競技はたくさんあります。全部応援してますけど、特に対談でお話ししたことのある沙羅ちゃんには頑張ってほしい。今年はまだW杯で優勝できてませんけど、何とかソチ五輪でメダルを逃した悔しさを晴らしてもらいたい。

 小平奈緒ちゃんとは、少しトレーニングを一緒にしたことがあります。ずいぶん前ですけど、長野県の菅平高原での合宿に参加したいと言ってきて。補強運動や体力トレーニングを一緒にしました。今、凄く波に乗っていますよね。滑っている時はとてもりりしい表情ですが、とにかく優しい子だなという印象が残っています。

 彼女は主将も務めますよね。あえて助言を送るとすれば、あまり自分にプレッシャーをかけず、いつも通りの自分で戦えばいい。主将という肩書を、背負いすぎる必要はない。競技にしっかり集中して力を発揮できれば、優勝できると思います。開会式は欠席しましたが、私も主将を務めたリオデジャネイロ五輪の開会式は欠席しました。あくまで競技、体調が第一です。

 20年には東京五輪が来ます。私がどう関わるかはまだ分かりませんが、4年に一度の五輪、一生に一度あるかどうかの母国での五輪なので、何らかの形で関わりたい気持ちは強いです。日本の選手にはたくさんメダルを獲って盛り上げてもらい、2年後につないでほしいと思います。

 ◆吉田 沙保里(よしだ・さおり)1982年(昭57)10月5日、三重県生まれの35歳。全日本王者の父・栄勝さんの影響で3歳からレスリングを開始。五輪3大会を含め、15年世界選手権まで世界大会16連覇。16年リオ五輪は銀メダル。12年11月には国民栄誉賞を授与された。1メートル57。至学館大職。現在は女子日本代表コーチ兼務。

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