日本選手団最年少代表だ 男子スノボ15歳・国武、ハヤブサの翼で世界へ飛ぶ

[ 2018年1月9日 10:00 ]

自宅で飼っているハヤブサを肩に乗せる国武(@thestompinggroundspark提供)
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 平昌五輪の開幕まであと1カ月となった。4年に1度の祭典で今回も多くのヒーロー、ヒロインが誕生するに違いない。スノーボードのスロープスタイルと新種目のビッグエアで代表候補となっている国武大晃(STANCER)は15歳のホープ。代表に決まれば今大会の日本選手団最年少になる。クワガタ飼育でギネス記録を持っていた父・大毅さん(44)譲りの“突き詰め力”が、金メダルへの道を究める原動力になっている。

 家の中に2羽のハヤブサがいる。ネズミのぬいぐるみを投げると、パッと捕獲して戻ってくる。国武は普通の人が犬と戯れるようにして、リビングでそんなふうにして過ごす。天気が良ければ父親とフライフィッシングへ。常に大ケガと隣り合わせの競技を戦う15歳の息抜きの時間である。

 「小さい頃は楽しい気持ちでいっぱいだった。年を取るにつれて自分のスタイルが出てきた。それも魅力」という3歳から始めたスノーボード。五輪イヤーを迎え、今季はビッグエアW杯でミラノ大会8位、北京大会4位と頭角を現し、五輪出場が見えてきた。

 その成長の裏には親子での二人三脚がある。これまでコーチと言えるのは父・大毅さんのみ。「基礎もそうだし、技術面も教えてくれる。難しい技もなぜか僕より知っている」と一緒に映像分析するなど技を磨いてきた。以前はスノーボード・クロスの草大会に出ていた大毅さんは、国武の指導のために自らもフリースタイル種目に挑戦し、手すりを滑る技術などを体を張って覚えた。

 スノーボードにとどまらず、やり始めたらとことんの性格。自ら考案したフライフィッシングのシステムが注目を集めて釣り雑誌に連載を持ったり、「息子にこんなに凄いのがいるんだと見せたかった」と始めたクワガタ飼育でギネス記録(112・3ミリ、現在は更新された)まで作った。ハヤブサを飼い始めたのも「鳥で一番スピードが速くて飛ぶのがうまいから」と国武の安全を祈っての願掛けが出発点だった。

 「ギネスは凄い」と父に感心する国武も、ことスノーボードに関しては負けていないようだ。数カ月前にもエアを飛ぶ際の回転軸について激論となり、駐車場で取っ組み合いを始めた。2人とも普段の物腰は極めて穏やか。しかし、真剣な時は途端に利かん坊になってしまうのである。ちなみに次の日には2人仲良くバス釣りに出掛けたという。

 12歳の夏には練習中に右足の外側側副じん帯損傷、大腿骨剥離骨折のケガを負った。1年以上のブランクを経験した分だけ、普段から深くスノーボードに没頭してきた。日夜、動画での研究はもちろん、プレイステーション4のスノーボードゲームでさえ「回転軸がリアルなので」とイメージトレーニングに生かしてきた。そうした突き詰める力が国武の支えになっている。

 前回のソチ五輪では平野歩夢が冬季五輪日本人最年少メダルを獲得した。代表入りを果たせば今回は国武が最年少代表となりそうだ。「試合でも年齢は関係ない。自分は楽しんで滑りたい」と言うが、その活躍はスロープスタイルとビッグエアへの注目度を高める要因にもなり得る。

 「世界チャンピオンになって応援してくださってる皆さんに恩返しができたらいい」と夢を語る国武に対し、大毅さんは「最近は自分が口出しができるレベルではなくなってきた」と今後は自力での飛躍を期待している。五輪前のW杯はスロープスタイルの残り2戦。出場権を確保し、ハヤブサのごとく平昌の空へと羽ばたく。

 ◆国武 大晃(くにたけ・ひろあき)2002年(平14)2月10日生まれの15歳。愛知県阿久比町出身。両親の影響で3歳からスノーボードを始める。当初はスノーボードクロスをしていたが、すぐにスロープスタイルなどフリースタイル種目にのめり込む。昨年3月の全日本選手権スロープスタイル尾瀬戸倉大会で優勝。今季からW杯に参戦。好きな食べ物は海外遠征帰りに東関東自動車道の酒々井PAで食べる肉うどん。1メートル63、54キロ。

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