歴史を書き換えるのか? 全米大学男子バスケットボール界で活躍する渡辺と八村の未来

[ 2017年12月27日 09:30 ]

ゴンザガ大の主力フォワードとして活躍している八村(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】「MOCK・DRAFT」。日本語にすると「仮想ドラフト」ということになるだろうか。米国のメディアではプロスポーツ界のドラフトへの注目度が高く、すでに2018年度の“金の卵探し”が始まっている。

 スポーツ・イラストレイテッド誌のNBAモック・ドラフトをのぞいてみた。12月11日が最新版。NBAのドラフトは北米4大スポーツの中では最も狭き門になっていて、計30チームあるものの指名は2巡目までで60人しか名前は呼ばれない。その60人を同誌は列挙しているのだ。

 1位はアリゾナ大の1年生センターでバハマ出身のディアンドレ・エイヨン(19歳)。全米大学バスケ界でデビューを果たした今季はすでに19・5得点、11・4リバウンドという文句なしの成績を残している。

 2メートル16という長身ながらミドルレンジからのジャンプシュートも得意。小技が効くところが評価の対象になっている。

 2位は今年の欧州選手権で初優勝を飾ったスロベニアの若き万能型フォワード、ルカ・ドンチッチ(19歳)で、球団によっては最上位に評価する可能性も示されている。

 さて順位をたどって記事を読んでいった。すると、35位に「能力を示す機会がもっと必要だが、もし今後いいパフォーマンスを披露できれば1巡目指名もありうる素材。体格には恵まれているし、シュートのタッチもいい。時が来れば価値ある選手に進化する」という文章があった。

 サイズは6フィート8(2メートル3)で体重は225ポンド(約102キロ)。その順位が仮想ではなく現実なら、2018年のNBAドラフト2巡目の5番目で指名されるであろう選手がゴンザガ大の八村塁(19歳)だった。

 平成世代にはさほど驚きはないかもしれない。八村の日本での活躍を考えれば、ある意味「当然」と思うかもしれない。しかし、NBAでプレーする全選手が“雲上人”に思えた昭和の世代にとって、2巡目までしかない現行のNBAドラフトの候補に日本人の名前が列挙されているというのは、夢を見ているような気分にさせられる。

 日本選手がドラフトされたのは過去に1例あるのみ。1981年の8巡目(当時は10巡目まで)、全体171番目で当時の日本代表センターで住友金属に所属していた岡山恭崇氏がウォリアーズからその名前をコールされたが、NBAでプレーすることはなかった。

 それから37年後となる2018年。もし八村が来年、ドラフト指名申請をすれば、それは歴史を書き換える“起点”になるのかもしれない。

 ゴンザガ大は昨季、チーム史上初めて全米大学選手権(NCAAトーナメント)の決勝に進出。1年生だった八村はシーズンを通してわずかな出場機会しかなかったが、運命的に何かを「持ってる」雰囲気を漂わせたシーズンになった。

 2年生になった今季も先発ではないが、出場時間は4・6分から18・2分にアップ。平均得点も2・6から9・2に増えており、スポイラ誌が述べたようにプレータイムが増えて能力を示す機会が増えれば、おのずと注目度は高まっていくだろう。

 大学で同期だったセンターのザック・コリンズ(20歳)は昨季のNBAドラフトで全体10番目に指名され、現在はトレイルブレイザーズに所属。八村が指名を受けてもそこにはたぶん違和感はないかもしれない。

 さて八村と同様、もう1人、期待の星がいる。それが4年生になったジョージ・ワシントン大の渡辺雄太(23歳)だ。今季は苦戦が続いているが、開幕から13試合で14・1得点、7・0リバウンドという成績は4年間の中で自己ベスト。6フィート9インチ(2メートル6)、196ポンド(約89キロ)というサイズでガード的な役割をこなせる選手は全米広しと言えども、それほど数はいない。なにより彼の評価を上げているのは数字に表れないINTANGIBLE(無形という意味)な部分。ブロックショットなどを含めた守備力はドラフト候補60人と双璧だと考えているのだが、どうだろうか?だからドラフトにはかからないが、どこかの球団のキャンプに呼ばれてもおかしくない存在。実際、昨季までジョージ・ワシントン大でチームメートだったフォワードのタイラー・キャバノー(23歳)はドラフト外でホークスに入団し、今季は先発でも1試合起用されている。

 田臥勇太(37歳=現・栃木ブレックス)がNBAサンズで4試合に出場してからすでに13年が経過。日本人2人目のNBA選手が本当に誕生するのか?全米大学男子バスケットボール界は、太平洋の対岸からの“風”を受けてまもなく新たな年を迎える。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市小倉北区出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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