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女子ジャンプの高梨沙羅はW杯で勝てなくても大丈夫

12月3日のW杯リレハンメル大会第2日、4位に終わりうなだれる高梨沙羅
Photo By スポニチ

 【藤山健二の独立独歩】あの光景は今でも目に焼き付いて離れない。2014年2月のソチ五輪女子ジャンプ。4位に終わった高梨沙羅(クラレ)は泣くでもなく笑うでもなく、ただ無表情のまま優勝したフォクト(ドイツ)を見つめていた。W杯13戦10勝と圧倒的な強さを誇り、金メダル確実と言われながら1回目のジャンプで3位と出遅れ。2回目も98・5メートルと距離を伸ばせず、まさかの4位に沈んだ。しかも、勝ったフォクトはそれまでW杯未勝利の無名選手。一瞬、高梨には何が起こったのか理解できなかったのだろう。これは現実なのか、いや夢に違いない。夢であってほしい…。うつろな表情からは、当時まだ17歳だった少女のそんな混乱ぶりが伝わってきた。

 あれから3年10カ月が過ぎ、高梨を取り巻く状況は大きく変わった。今季のW杯は開幕から4戦して0勝。ルンビ(ノルウェー)、アルトハウス(ドイツ)の2強に歯が立たず、最高が3位と苦戦が続いている。前半戦で一度も勝てなかったのは初めてのことで、周囲からは当然のごとく心配する声が上がり始めた。だが、私はそうは思わない。むしろ、これで良かったとさえ思えるのだ。

 もちろん、W杯で勝つに越したことはない。負けるより勝った方がいいのは当たり前だ。ただ、どんな選手でもピークの状態を2カ月も3カ月も維持することは難しい。ソチの時の高梨はW杯開幕からずっと全力で勝ち続け、その勢いのままソチに挑んだが金メダルを逃した。本人も気づかないうちに、恐らくピークがずれてしまっていたのだろう。その反省を生かして今季はあえてピークを遅らせているに違いない。19日に帰国した際の「焦らず、慌てず、諦めず」という言葉が何よりもよくそのことを証明している。だとすれば、今W杯で勝てなくても何も心配はいらないではないか。

 今回の日本勢は他の競技にも金メダル候補が多く、なかなか調子の上がらない高梨にマスコミの取材が集中しないのも好都合だろう。本番まであと2カ月。ここから大事なことは周囲の雑音に耳を貸さないことだ。最後に平昌で笑えばいいのだから、負けて何を言われようと絶対にブレてはいけない。技術的なチェックは重要だが、必要以上に考えすぎるのもよくない。うまくいかないことがあってもネガティブにならず、常にいい方向に考える。ソチでの敗北から続けてきた自分の努力を信じ、最後までポジティブな思考を貫ければ必ず結果は付いてくる。

 ソチで悔しい思いをしたからこそ、平昌では心から思い切り笑って欲しい。そう願っているファンは本人が思っている以上に多いはずだ。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

[ 2017年12月21日 09:40 ]

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