桐生 飛躍誓う、9秒98のその先へ 次は「9秒8台目指す」

[ 2017年12月5日 05:30 ]

インディ500の優勝トロフィーを挟み写真に納まる桐生(左)と佐藤
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 スポーツニッポンフォーラム制定「FOR ALL 2017」の表彰式が4日、東京都文京区の東京ドームホテルで開催された。グランプリは陸上男子100メートルで日本人初の9秒台となる9秒98を出した桐生祥秀(21=東洋大)、世界三大自動車レースの一つ、インディアナポリス500マイル(インディ500)で初優勝した佐藤琢磨(40=ホンダ)が受賞。それぞれ副賞として100万円が贈られた。

 日本短距離界を「100メートル9秒台」という新たなステージに引き上げた桐生が、新たな勲章を手にした。リオデジャネイロ五輪リレーチームの一員として受賞した昨年に続き、2年連続の栄冠。日本記録を19年ぶりに塗り替えた最速の男は、まばゆいばかりのフラッシュを浴びながら「もう9秒台を出さなきゃ、というの(重圧)がない。じっくり自分の走りをしていって9秒9台、8台を目指していきたい」と堂々とスピーチした。

 今年の9月9日。東洋大のユニホームを着ての100メートルとしては、最後のレースとなる日本学生対校選手権で大記録は生まれた。中盤以降の圧倒的な加速でフィニッシュ。優勝を確信したと同時に、電光掲示板を見やった。“9秒98”。会場が一気に沸き、桐生の血も沸騰した。「速報値は9秒99、9秒台で止まってくれと思っていた。くすぶっていた4年間だったが、最後の最後でご褒美がありました」と激動の一年を振り返った。

 京都・洛南高3年時に10秒01をマークしてから、今年10秒の壁を突破するまでは、どのレースもメディアが殺到。「10秒01から4年間かかってしまい、なんで30センチに4年間かかるんだと言われた」とも明かす。ただ、そのプレッシャーをついに力に変え、日本中を熱狂させた。

 つかの間のオフを経て、すでに11月末から来季に向け始動。土江寛裕コーチと再び二人三脚で世界と戦える体をつくり上げる。東洋大を卒業する18年は「挑戦」がテーマ。大学時代にはできなかった200メートルの自己記録更新を視野に入れ、さらに今年苦杯をなめた日本選手権(6月、山口)や、アジア大会(8月、ジャカルタ)を制するという大きな目標もある。「海外のダイヤモンドリーグを含め、いろんなことにチャレンジしたい」。“ジェット桐生”の名にたがわぬスピードで成長を続ける。

 ▼桐生の日本学生対校選手権VTR 男子100メートル決勝は5レーンに桐生が入った。追い風1・8メートルという絶好のコンディションの下、序盤はライバルの多田修平に先行を許すが、中盤以降持ち前の鋭い加速でトップに浮上してフィニッシュ。伊東浩司氏の持つ10秒00の日本記録を19年ぶりに更新し日本短距離界に新たな1ページを刻んだ。

 ◆桐生 祥秀(きりゅう・よしひで)1995年(平7)12月15日、滋賀県彦根市生まれの21歳。小学校ではサッカー、兄の影響で中学から陸上を始めた。京都・洛南高2年の12年に100メートルで18歳未満の当時世界最高10秒19をマーク。高校3年の13年4月には10秒01をマークして一躍脚光を浴びた。東洋大に進学後、15年3月のテキサスリレーで追い風参考ながら9秒87を出した。400メートルリレーで16年リオ五輪銀メダル、17年世界選手権銅メダルを獲得した。1メートル76、70キロ。

 ◇スポーツニッポンフォーラム 「スポーツ振興支援、国民の健康づくりを語り合い、明るく元気な日本をつくる」ことを目的に、官民一体で構成した異業種勉強交流会。開催は年4回で、そのうちの1回は表彰制度「FOR ALL」を設けている。表彰者は選考委員会を経て決定。(1)スポーツを通じて日本を元気づける顕著な働きをした個人または団体。(2)社会貢献並びに地域振興に寄与した個人または団体にグランプリが贈られる。

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