内村 個人総合V7消滅、左足負傷 情熱失わず「はい上がる」

[ 2017年10月4日 05:30 ]

体操 世界選手権第1日 ( 2017年10月2日    カナダ・モントリオール )

世界体操選手権第1日 跳馬の演技で左足首を負傷した内村は苦痛の表情を見せる
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 キングの進撃が止まった。男子予選が行われ、個人総合で6連覇中だった内村航平(28=リンガーハット)は、2種目目の跳馬で左足首を負傷。次の平行棒は演技したものの、鉄棒以降の後半3種目を棄権し、五輪と合わせた世界大会の連覇は「8」で、08年11月から続いていた連勝は「40」でストップした。白井健三(21=日体大)は85・697点をマークし予選4班中3班終了時点で、暫定4位につけた。

 王座から去った。誰もが予想できない痛々しい姿で。松葉づえで体を支えながら取材エリアに現れた内村は、「ホントに申し訳ないっす」とつぶやいた。「なんで世界選手権でケガをしないといけないのか。一番大きな舞台でやってしまって“なんでだ”って気持ちが大きい」。ライバルに敗れることなく連覇と連勝がストップし、自嘲気味に笑った。

 2種目目の跳馬で悪夢が待っていた。リオ五輪以来、1年2カ月ぶりに「リ・シャオペン」にトライ。「何度も死ぬと思ったことがある」と言う技の着地で左足首を負傷した。「僕はリ・シャオペンを高さでやるよりは技術でやる選手。高さがない状態でひねりきれない時もある。立ちたいという気持ちが凄くあって、どんな体勢でも立つと決めていた」。強引に体をひねって技を成功させた着地は「すねが真っ二つに折れたかと思った」と話すほどの衝撃だった。演技としては、15・166点のハイスコア。「成功したのにケガをするって意味が分からない」。次の平行棒は何とか演技したものの、鉄棒以降の後半3種目を棄権した。

 強行出場の選択肢もあったが、20年来の親友でもある佐藤寛朗コーチの「ここで全部が終わるわけじゃない」という言葉も決断を後押し。「万全の状態でできないので、諦めはついた」と内村は淡々と振り返った。愛する体操をもっとメジャーにするために昨年12月、日本初のプロ選手に転向。今大会で結果を残せなかったものの、ケガや棄権が大ニュースになる事実が、内村の偉大さを物語っている。

 負傷の程度は不明だが、今季はこのまま終了の可能性が高く、20年東京五輪に向けて来季出直しを図る。体力面で負担が大きい個人総合を続けるのか、スペシャリストとして戦うのか。「今までと違う形でやってもいいかもしれない。でも、自分の中ではそれは逃げているんじゃないかという部分もある」と話すにとどめたが、「しっかり治して、はい上がってやろうかなと思う」と前を向いた。体操への情熱を失っていない内村は、いつかまた王座に帰ってくる。

 ▼日本協会水鳥寿思強化本部長 (内村は)ひねりをねじ込んだ時に左足に体重が乗りすぎて、大きな負荷がかかった。検査をしないと骨、じん帯に異常があるか分からない。(モントリオール滞在中に)病院に検査に行く可能性はある。

 ▽体操世界選手権 今年は五輪翌年で団体総合は実施せず、個人総合と種目別で争われる。男女とも予選で個人総合は上位24人、種目別は各種目の上位8人(いずれも各国・地域最大2人)が決勝に進出する。

 《9年負けなし》個人総合の内村は08年北京五輪後の全日本学生選手権で植松鉱治(当時仙台大)に敗れて2位だったが、同年11月の全日本選手権から国内外の大会で実に9年間負けなしだった。昨夏のリオ五輪では加藤沢男以来44年ぶり史上4人目の五輪2連覇。世界選手権では11年大会で前人未到の3連覇を成し遂げると、前回15年大会で連続優勝記録を「6」に伸ばした。今季は全日本で10連覇に続いてNHK杯で9連覇を飾り、連勝記録を40としていた。

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