伊達の「チャレンジ」終わった 初戦敗退で2度目現役に別れ

[ 2017年9月13日 05:30 ]

テニス・ジャパン女子オープン 女子シングルス1回戦   伊達0―2クルニッチ ( 2017年9月12日    東京・有明テニスの森公園 )

現役最後の大会で敗れ、引退セレモニーで涙を浮かべる女子テニスの伊達公子
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 シングルス1回戦で今大会限りでの現役引退を表明していた伊達公子(46=エステティックTBC)が、世界ランキング67位のアレクサンドラ・クルニッチ(24=セルビア)に0―6、0―6で敗れ、競技生活に別れを告げた。96年に26歳で一度は引退し、08年に37歳で現役に復帰。近年は自身の体とも戦い続けたレジェンドは、約9年半に及んだ2度目の現役を時に目を潤ませながらも笑顔で締めくくった。

 試合開始からわずか49分。最後のショットがネットに掛かると、勝負師の顔は笑顔に変わった。これでもう、競技者としてコートに立つことはない。さまざまな感情がこみ上げてもいいはずだが、伊達の本音は違った。

 「(2度目の現役期間は)9年半になるが、チャレンジの連続で、チャレンジが好きでたくさんのチャレンジが日々起こって、それに向かって一つ一つ取り組んでいくことが、凄く充実していたし、達成感を感じられた」

 雨の影響で予定より1時間半近く遅れて始まり、約2800人の観客が見守った。1ゲームも取れず奪ったポイントはわずか13。時折、かつて世界を席巻したライジングショットで客席を沸かせたが、全盛期の姿とはほど遠かった。昨年4月に膝の手術を受け、古傷の肩も痛めていた。「1ゲームは取りたかった」と生来の負けず嫌いの一面ものぞかせたが、「今日は(負けて)悔しかったというのはない」とやはり笑顔で振り返った。

 ただ、08年4月の復帰時に「若い選手に少しでも刺激になればいい」と最大の目的を語っていただけに、試合後のセレモニーで2回りも年下の現役選手と抱擁を交わすと、頬を光るものが伝った。一切の妥協なく、求道者のように練習に励む姿は、若手に大きな影響を与え続けた。「コーチに“伊達さんを見てみろ”と言われるので、そういう意味では刺激になったかな」。錦織らが活躍する男子を含め日本テニス界隆盛の土台をつくった。

 コートには別れを告げるが、1度目の引退時の「テニス界に足を踏み入れたくない」という感情はない。「明日、会場にいるかもしれませんし」と予告。そして、「負けることが大嫌いだった。伊達公子は怖いと言われたけど、勝負にこだわるがゆえ。お許しください」と満面の笑みでしめくくった。新たな門出を祝うように有明の空には虹がかかっていた。

 ◆伊達公子(だて・きみこ) 1970年(昭45)9月28日、京都市上京区生まれの46歳。1メートル64、55キロ。6歳から始め、兵庫・園田学園高3年で出場した全国高校総体でシングルス、ダブルス、団体の3冠。89年の卒業後にプロ転向。94年全豪、95年全仏、96年ウィンブルドンでいずれも4強。95年11月に記録した世界ランキング4位は現行制度で日本女子最高。シングルスツアー通算8勝も最多。ダブルス通算6勝。シングルスでは通算450勝268敗。96年9月に引退宣言。08年4月に37歳で現役復帰表明。09年9月に韓国オープンで13年ぶりツアー優勝。42歳の13年には全豪で最年長勝利、ウィンブルドンで最年長3回戦進出。01年にレーシングドライバーのミハエル・クルムと結婚。16年9月に離婚。

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