「橋本スペシャル」で世界一!独自の技で進撃「最高です」

[ 2017年9月1日 05:30 ]

柔道世界選手権第3日 男子73キロ級決勝   ○橋本 優勢 オルジョイ● ( 2017年8月30日    ハンガリー・ブダペスト )

男子73キロ級決勝 アゼルバイジャン選手を破り金メダルを獲得し、喜ぶ橋本壮市
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 男子73キロ級で初出場の橋本壮市(26=パーク24)が決勝でリオ五輪銀メダルのルスタム・オルジョイ(アゼルバイジャン)を破り、初優勝を果たした。この階級は日本勢が6大会連続で優勝。リオ五輪金の大野将平(25=旭化成)が君臨する黄金階級に、晩成の大器が現れた。女子57キロ級では初出場の芳田司(21=コマツ)が銀メダル。31日の第4日には男子81キロ級が行われ、永瀬貴規(23=旭化成)は4回戦で敗退した。

 リオ五輪では大野が畳の上で笑顔ひとつ見せず、そんな姿が国内外から称賛された。それとは真逆の新王者が橋本だ。準決勝はきれいな一本が決まり、右拳を握った。決勝では延長1分42秒に優勝を決める技ありを奪うと、右手を天に突き上げた。

 「最高です。何が何だか分からなかったがうれしくて叫んじゃいました。何度も心が折れかけたが、“絶対に俺が世界王者になる”と言い聞かせた」

 これまでの歩みも対照的だ。同学年の大野は13年に世界選手権を初制覇。そのころ、代表とは無縁だった。東海大相模高では81キロ級でインターハイを制覇したが、東海大入学後の体重はリミットに5キロも足りなかった。上水監督に促され3年時にしぶしぶ階級を下げたが、しばらくは対処できず全日本柔道連盟の強化指定も外れた。大野の背中は遠かった。

 社会人になり精神面で成長すると、超一流の素質が一気に開花した。研究熱心で独自の技を考案しては「橋本スペシャル」と名付ける。3回戦での袖釣り込み腰と見せかけての体落としは、今大会のために編み出したスペシャル3。準決勝での右と見せかけ逆に掛けた袖釣り込み腰はスペシャル2だ。

 8月中旬には乱取り中、左足首の外側にある前脛腓(ぜんけいひ)じん帯を損傷。松葉づえを突き「2週間は柔道の練習を全くできなかった」が、準決勝でリオ銅メダリスト、決勝で銀メダリストを撃破。決勝では右人さし指の爪が剥がれるアクシデントも克服した。「2位と3位は倒した。あとは1位を倒すだけ」。大野を視界に捉えた橋本は、不敵な笑みを浮かべた。

 ◆橋本壮市(はしもと・そういち) 1991年(平3)8月23日生まれの26歳。静岡県出身。6歳の時に地元の育誠館で始め、中学から地元を離れ、神奈川・東海大相模中―同高―東海大と進学。14年にパーク24入り。高3でインターハイ81キロ級を優勝。団体戦でも史上2校目となる2年連続高校3冠を達成。昨年12月のグランドスラム東京大会から5大会連続優勝中で、73キロ級の世界ランキング1位。明るい性格で代表チームではムードメーカー。真面目で知られる同期の羽賀龍之介は「彼のようなキャラクターにはなれないが、エネルギッシュな部分は見習いたい」。66キロ級の阿部一二三同様、赤やオレンジのパンツを好んで着用。愛車のSUVも赤色。

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