NBAのスーパースター、カリーがプロゴルフ初参戦 異色の二刀流に?

[ 2017年8月8日 10:00 ]

ゴルフのツアー競技に出場したウォリアーズのカリー(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】1996年のNBAファイナル。敵地シアトルでの非公開練習を終えたブルズのマイケル・ジョーダン(現ホーネッツ・オーナー)は、ピンクのベストを身につけ、ハンチング帽をかぶってメディアの前に現れた。ウエアのベースになっているのは完璧なニッカーボッカー・スタイル。ファイナル第4戦の前日だったが、余裕の表情を浮かべていたバスケの神様は、「今からゴルフを楽しんできます」と体全体で表現していた。

 ジョーダンのゴルフ好きは有名。米PGAトーナメントのプロアマにも幾度となく出場しており「野球に続いてゴルフにも挑戦か?」などと騒がれたものだった。

 さて同じNBAでスターの座に登りつめたウォリアーズのステフィン・カリー(29)もゴルフが好きだ。ただしジョーダンと違うのは、本当にプロの大会に個人として出場してしまったことだった。

 参戦したのはPGAの下部「ウェブドットコム・ツアー」に組み込まれているエリー・メイ・クラシック。“マイナー”とは言え、PGAツアーの優勝経験者が7人参加したレベルの高い大会だった。開催コースはカリフォルニア州ヘイワードのTPCストーンブレイ。7024ヤードながらパーは70で、アマチュアとして出場したカリーにとってはタフなセッティングだったはずだ。

 スコアは2日間の予選を終えて通算8オーバーの148。ホールアウトした153人中148位タイという成績で決勝ラウンドには進めなかったが、それでも計5つのバーディーを奪って2日間とも74で回ったカリーのプレー内容は、多くの選手と関係者を驚かせた。

 今季の全英オープンを制したジョーダン・スピース(24)は「ほぼ全員の予想を、いい意味で裏切ったと思う」と、NBAのシーズンMVPに過去2回選出されているカリーの能力の高さに感嘆。時同じくしてオハイオ州アクロンで開催されていたPGAツアーのブリヂストン招待に出ていたトッププロたちも、この日はカリーの話題で持ちきりだった。

 さてゴルフ好きが山ほどいる大リーグ、NFL、NBA、NHLの北米4大スポーツの選手たちの、トーナメントでの最少スコアはいくつだったのか?というのを調べてみた。今年の全米オープン地区予選(18ホール)では、引退したばかりのNFLカウボーイズのQB、トニー・ロモ(35)が出場したが、カットラインに6打及ばず落選。スコアは3オーバーの75だった。そのNFLでもっともゴルフがうまかったのはオイラーズ(現タイタンズ)などで活躍したキッカー、アル・デルグレコ(55)と言われているが、2001年と03年に当時の下部ツアーに出場した時のスコアは76、79、75、78。レッドスキンズのQBでスーパーボウルの優勝経験も2回あるマーク・リピン(54)は、1992年にPGAツアーのケンパー・オープンに出場したがスコアは80、91だった。

 もしかしたらカリーがマークした74は北米4大プロスポーツ界の最少記録?その真偽はわからないが、ツアー初出場となったNBAのMVP男は、今季のファイナル同様に全米に衝撃を与えていた。

 「ゴルフ界の次のスター候補たちと一緒にプレーできたのは、面白かった。彼らがどんなレベルでプレーしているのかを自分の目で確認できたからね」。スポーツ専門局、ESPNのインタビューに応じたカリーはこう語ってる。

 ドライバー平均飛距離は293・5ヤードで出場選手の中では121位。フェアウエー・キープ率(50%)は147位、パーオン率(47・2%)は147位と、ツアー初体験にもかかわらずスコアを含めていずれも最下位ではなかった。

 さてゴルフ界のレベルを自分の目で確認したリーグ屈指のシューター。NBAでの平均年俸は4023万ドル(約44億7000万円)だが、ボールを入れる“穴”がシーズンを通して小さくなる日が、やがて訪れるのかもしれない。 (専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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