日の丸ラストランに臨む公務員ランナー川内 家族の思いは

[ 2017年8月3日 11:34 ]

今年3月の久喜マラソンでポーズを決める川内一家。右から美加さん、鮮輝さん、優輝、鴻輝さん
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 公務員ランナー・川内優輝(30=埼玉県庁)の集大成の時が迫ってきた。71度目のフルマラソンとなる陸上の世界選手権(英国・ロンドン、日本時間6日午後6時55分号砲)は、日本代表として戦う最後の舞台になる。日の丸ラストランを前に、川内を近くで見守ってきた家族の心境に迫った。

 川内にとって最初のコーチは母の美加さん(53)だった。小学1年の時、ちびっこマラソン大会の1500メートルを走ったのが川内の初レース。息子が5位に入ったのを見た元中距離ランナーの母は「速くなるかも」と思い、小学校卒業までほぼ毎日、公園でのタイムトライアルを課した。

 必死の形相で駆けていた小学生は、3度目の世界選手権を日本男子の主将として迎えるまでに成長した。「さすがにこんな選手になるなんて想像できませんでしたね」と笑う美加さんは、「今までたくさんの経験をしてきたので、それを絶対に生かしてほしい。悔いなく走ってほしい」とエールを送った。

 川内には弟が2人いる。鮮輝さん(26)と鴻輝さん(24)。2人とも兄から大きな刺激を受けてきた。

 鮮輝さんは「兄は憧れであり、尊敬できる人物。走ることに対する姿勢がすごい」と言う。実力は兄に遠く及ばないが、走ることを人生の最優先事項にしたくて16年3月に会社を辞めた。

 “自称プロランナー”としてレース出場やイベント出演をこなし、川内が50キロ走を行う際などは練習パートナーも務めてきた。「いい練習ができていたし、試合でもいい走りができると思う。入賞を果たしてほしい」。鮮輝さんの最大目標は来年、100キロ世界選手権に出場すること。兄は日の丸に別れを告げようとしているが、弟は日の丸を背負うことを夢見る。

 鴻輝さんはマラソン関連のイベントなどを手がける会社を立ち上げ、社長として奮闘中だ。来年以降、代表争いに参戦しない理由について、川内は19年ドーハ世界選手権、20年東京五輪が苦手の酷暑で開催されることを理由に挙げているが、鴻輝さんの見方は少し違う。

 もちろん、暑さに対する不安も要因だが、「今回が“最後”と思わないと精神的に持たないからだと思う」と鴻輝さんは説明する。注目され、責任を背負い、ストレスをため込む姿を見てきた。「終わりが見えればラストスパートできるように、最後と言い聞かせることで全てをロンドンに捧げたかったのでは」とし、「ゴール後、満面の笑みでテンション高めに話している兄貴を見たいです」と続けた。

 家族はもちろんロンドンに駆けつけ、沿道から声援を送る。後悔がない、完全燃焼の42・195キロになることを願いながら。(杉本 亮輔)

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2017年8月3日のニュース