初戦リタイア続出にフェデラーもジョコも困り顔 必要なのは新たな賞金ルール?

[ 2017年7月5日 10:30 ]

<ウィンブルドン選手権>男子シングルス1回戦、ジョコビッチ(左)と棄権したクリザン(AP)
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 ウィンブルドンの男子シングルス1回戦で、4日までに7人が途中棄権で姿を消した。その理由はスリッピーで不慣れな選手が多い芝コートにあるのだろうか。

 64試合中7試合が多いか少ないかは別にして、4日のセンターコートのチケットを持っていた観客はさぞやがっかりしたに違いない。

 まず第2試合でジョコビッチ(セルビア)が登場したものの、6―3、2―0となったところで相手のクリザン(スロバキア)が棄権。気を取り直して次にフェデラー(スイス)が出てきたと思ったら、前の試合をなぞるように今度はドルゴポロフ(ウクライナ)が6―3、3―0となった時点で試合をあきらめた。

 「ロジャーの結果と自分の結果がほとんど同じなんて妙な話だ」と言うジョコビッチは、ロッカールームでフェデラーと顔を合わせて「観客を入れたままセンターコートで練習試合でもした方がいいんじゃないかな」と冗談を飛ばしたという。残念ながらセンターコートはその後も試合の予定が入っていたため、その“企画”は幻に終わったのだが。

 初戦リタイアが計画的なものとは思いたくないが、はなから5セットマッチは無理そうなコンディションの選手もいる。では、なぜそんな選手が強行出場するのか。

 それは1回戦に出ただけでウィンブルドンなら3万5000ポンド(約510万円)という高額な賞金が得られるからだ。これは途中棄権しても関係なく支給される。だからこそ故障を抱えた上に、ジョコビッチやフェデラーのような強豪相手に劣勢に陥った選手は、さっさと見切りをつけてしまうのかもしれない。

 だがこれは魅力ある試合を提供したい大会、そして熱戦を期待するファンを裏切る行為であり、テニス界にとってマイナスにしかならない。

 この事態を回避するため、男子ツアーでは今年から新たなルールを試験的に採用した。

 会場で大会ドクターの診断を受けて所定の期日までに申請すれば、年間2回までは試合前に棄権しても初戦に出場したのと同額の賞金が得られるのだ。空いた出場枠にはラッキールーザーが入り、その選手は出場機会とともに、2回戦以上に進めば賞金だって獲得できる。できるだけ多くの人が利益を享受できるようにと考案されたルールなのだ。

 ジョコビッチは「対処すべき問題。自分としてはATPの新しいルールを支持したい」と語り、フェデラーも「ツアーでは解決策を考えている。4大大会も対応していくべきだと思う」と同調した。確かに1つの対応策ではあるだろう。

 年々賞金額が上がり続ける4大大会だからこそ、このような問題も出てくる。華やかな話題の一方で“抜け道”をふさぐ細やかなルール整備も求められている。(テニス担当・雨宮 圭吾)

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