松山英樹 躍進支える技術力とメンタル面の成長

[ 2017年6月30日 09:30 ]

松山英樹(AP)
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 【福永稔彦のアンプレアブル】全米オープンで松山英樹(25=LEXUS)がメジャー日本男子最高に並ぶ2位に入った。2月のフェニックス・オープンで2連覇を達成後は、1度もトップ10入りがない中で迎えたメジャー第2戦での躍進。ショートゲームがその原動力になった。

 まずパットが復調した。4日間のデータを見ると合計パット数108はランキング2位。パーオン時のパット数は1・625で3位。第1日はショートパットが決まらず苦しんだが、ホールアウト後に宮里優作の父・優氏らにアドバイスをもらってきっかけをつかむと、第2日は合計25パットでメジャー自己ベストスコア65をマーク。最終日も合計25パットで66の好スコアにつなげた。

 アプローチの精度の高さも際立っていた。グリーンエッジから30ヤード以内の全ショットのスコアへの貢献度を示す「ストローク・ゲインド・アラウンド・ザ・グリーン」は4・885で7位だった。最終日の14番ではスピンを掛けてピン側にぴたりと止めるアプローチを披露。米ツアー公式サイトで「クレージーなアプローチ」と絶賛された。

 松山にとって最大の武器であるショットのデータは、フェアウエーキープ率76・79%(37位)、パーオン率66・67%(40位)と傑出した数字ではなかった。通算12アンダーまで伸ばすことができたのはショートゲームによるところが大きい。

 そして、重圧のかかるメジャーの優勝争いの中で自分のゴルフを貫くことができたのはメンタル面の成長があったからだと指摘する人も多い。

 大学時代の恩師である東北福祉大ゴルフ部の阿部靖彦監督は「米ツアーでいろんなことを経験して心が大人になったことが1番大きいと思う。全米オープンでは笑顔が多かった」と証言する。

 これまでの松山は無表情でラウンドすることが多かった。メジャーとなれば集中度も高くなり、ピリピリムードを漂わせていた。しかし今回はラウンドの途中で進藤キャディーと笑顔で談笑する光景が何度も見られた。また以前の松山はミスショットの後に怒りでクラブを地面にたたきつけることがあったが、ミスをしても切り替えて次のショットに臨んでいた。

 71とスコアを伸ばし切れず8位から14位に順位を下げた第3日終了後にこんな出来事があった。

 ラウンド後にドライビングレンジで打ち込んでいた松山に、テレビ解説者として会場で取材中の青木功・日本ゴルフツアー機構会長が近寄り「インタビューしていいか」と聞いてきた。周囲の関係者も肝を冷やした想定外の打診を松山は快諾し、笑顔でインタビューに応じていた。

 後に青木会長は「断られるだろうと思ったんだけどね。(放送席からマイク越しに質問した)丸山(茂樹)もびっくりしていたよ。余裕ができたというか、切り替えがうまくなったのじゃないか」と振り返っていた。

 技も心も進化した松山。世界ランキング2位にいることは必然だ。だからと言ってメジャーに勝つ保障にはならない。それでも期待してしまう。次のメジャー全英オープンは7月20日に英国・ロイヤルバークデールGCで開幕する。 (専門委員)

 ◆福永 稔彦(ふくなが・としひこ)1965年、宮崎県生まれ。宮崎・日向高時代は野球部。立大卒。Jリーグが発足した92年から04年までサッカーを担当。一般スポーツデスクなどを経て、15年からゴルフ担当。ゴルフ歴は20年以上。1度だけ70台をマークしたことがある。

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