サニブラウン最強10秒05 5強の争い制し世界切符つかんだ

[ 2017年6月25日 05:30 ]

陸上日本選手権第2日 男子100m ( 2017年6月24日    大阪・ヤンマースタジアム長居 )

ケンブリッジ飛鳥(左)が終盤の追い込みで3着に入り、桐生祥秀(左から2番目)は4着と遅れた
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 世界選手権(8月、ロンドン)の代表選考を兼ねて行われ、男子100メートル決勝はサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)が10秒05で初優勝を飾った。小雨の降る中、前日に出した自己ベストを0秒01更新。昨年リオ五輪男子400メートル銀メダルメンバー3人と新星2人による5強の争いを制し、世界切符を獲得した。10秒16で2位の多田修平(21=関学大)、10秒18で3位のケンブリッジ飛鳥(24=ナイキ)も代表を有力とした。

 もう誰もこの恐るべき18歳を止められない。レース10分前に突如として降り出した大粒の雨。トラックには水が浮く悪コンディションだったが、強心臓のサニブラウンにとっては「10秒0台が5人もいたので物凄く楽しみでしたし、ワクワクした気持ちが止まらなかった」と関係なし。スタートは「つまずき気味」だったが、1メートル87の体格を生かしたダイナミックなフォームで多田を中盤で捉えてトップに立つと、02年朝原宣治に並ぶ大会記録の10秒05でフィニッシュした。

 「スタートが遅れてもったいない。悔しいレース。通過点として考えている。これを自信にして世界選手権でいい結果を残せるようにしたい」。ケンブリッジ、桐生、山県ら第一人者たちを寄せつけず、前日に10秒06を記録した勢いそのままに初の日本一と世界切符をもぎ取った。予選から全て10秒0台をそろえたのは大会史上初。それでも反省が先に出るところが底知れぬ才能をうかがわせた。

 大舞台で力を発揮できたのは常に世界に目を向けているから。ケガで断念した昨年リオ五輪は高校の合宿と時間帯が重なっていたため、陸上はさほど見ていなかった。どちらかというと「水泳を見ていた」と意外な真実を明かした上で「やっぱりマイケル・フェルプス。あのメダルの数はちょっと凄い」と日本の陸上男子400メートルリレー銀メダルより、1人で5つの金メダルを獲得した世界一の男に目を奪われた。

 昨冬からオランダに拠点を置いたのも「日本と世界のトップでは質が違う」から。現地の選手やコーチに教えを請い、今年に入ってウエートトレーニングを開始したのもその一つだ。上半身の筋力をつけてレース中の横ぶれがなくなり、推進力が増した。この日の決勝は最高速度は57メートル地点での秒速11・52メートル(日本陸連科学委員会のデータ)。昨年5月のレースの秒速11・22メートルに比べると大幅な成長を果たした。

 次なる舞台は15年北京大会に続いて出場するロンドンでの世界選手権。100メートルは憧れのウサイン・ボルトの引退レースとなる。「背中を追いかけるのではなく横で走れれば」。日本人初の9秒台は「そのうち出る」と言い切る18歳が日本の頂上決戦を制した強さで世界と勝負に挑む。

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年(平11)3月6日、福岡県生まれ。父はガーナ人で母は日本人。幼少時はサッカー少年で小3から陸上。15年世界ユース選手権で100メートルと200メートルの2冠。200メートルはウサイン・ボルト(ジャマイカ)の大会記録を塗り替えた。同年の世界選手権200メートルに日本史上最年少の16歳5カ月で出場。1メートル87、79キロ。

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