稀勢、左腕使えない…3連覇へ試練の船出 嘉風に完敗「相手が強いから負けた」

[ 2017年5月15日 05:30 ]

大相撲夏場所初日 ( 2017年5月14日    両国国技館 )

<大相撲 夏場所 初日>嘉風(左手前)に押し出される稀勢の里
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 3場所連続優勝を目指す横綱・稀勢の里(30=田子ノ浦部屋)がいきなりつまずいた。10年ぶりに皇太子ご夫妻が観戦される中、結びで対戦した小結・嘉風(35=尾車部屋)に右からおっつけられると押し出された。新横綱だった春場所は左上腕付近を負傷しながら優勝したが、万全には程遠い状態。初めて東の正位に座った稀勢の里は厳しい船出となった。

 結びの一番。稀勢の里が土俵際に後退すると、館内に悲鳴が響く。次の瞬間、黒星が決まると、ため息が広がった。期待の和製横綱の黒星とあって、座布団が舞ったのは数枚だけ。横綱として初めて両国国技館での本場所に臨んだが、厳しい現実を突きつけられた。

 「まあ悪くないですけど相手が強いから負けたのでは。相手が上回ったんじゃないか」

 初めて東支度部屋の一番奥に陣取った横綱は悔しさを押し殺すように淡々と振り返ったが、内容はいいところがなかった。痛めている左腕はサポーターの上からテーピングで固定し、右から踏み込んで左を差しにいった。その左をおっつけられると何もできなかった。上体が起きてずるずる後退。土俵際の右突き落としも及ばず、横綱2場所目で初めて格下に土をつけられた。不安の残る左腕は全く使えない。この日は人気漫画「北斗の拳」の三つぞろいの化粧まわしで土俵入りを行ったが、自らがつけた「ラオウ」のような圧倒的強さは見せられなかった。

 3月の春場所は13日目に左上腕付近を負傷しながら、強行出場して逆転優勝を果たした。治療のため4月の春巡業を全休し、土俵での稽古を再開したのは番付発表の翌日の2日から。6日からは5日間連続で他の部屋に出向いて関取との稽古を続けて出場にこぎ着けた。この日の朝稽古後も「いい状態に仕上がった。あとはやるだけ」と話していたが、本場所の土俵は違った。稽古場との違いを聞かれると「それはあると思う」と認めた。八角理事長(元横綱・北勝海)は「稽古場では(左から)おっつけられたと聞いたが、攻められなかった。自信がないのかな。不安を払しょくするまで稽古ができなかったということ」と分析した。

 初優勝からの3連覇なら双葉山以来80年ぶり、新横綱場所からの2連覇なら大鵬以来55年ぶりとなる。大横綱と肩を並べるチャンスも、黒星発進で極めて厳しい状況となった。過去に初日から連敗して優勝した力士はいない。それどころか、横綱という地位では休場という声も上がってくる。2日目の平幕・隠岐の海戦は初日以上に重要な一番となる。この日も当日券を求めて長蛇の列ができ、午前8時5分には入場券完売を意味する「札止め」フィーバーは続いている。「また明日。切り替えてやるだけ。集中してやりたい」。強じんな精神力で幾多の逆境を乗り越えてきた男は、自分に言い聞かせるように奮起を誓った。

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