【高野進の目】ケンブリッジ 狙いすぎると記録は出ない あくまで自分の走り完成を

[ 2017年4月17日 07:44 ]

男子100メートル予選で9秒98を記録し、電光掲示板でタイムを確認するケンブリッジ飛鳥
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 陸上男子で昨年のリオデジャネイロ五輪400メートルリレー銀メダルのケンブリッジ飛鳥(23=ナイキ)が15日、米フロリダ州クレアモントで行われた競技会の100メートルに出場し、今季初戦となった予選で5・1メートルの追い風参考記録ながら9秒98をマークした。男子400メートル日本記録保持者の高野進氏が解説する。

 強い風が吹けば誰でも9秒台を出せるわけではないので、今回のレースはケンブリッジにとって決してマイナスにはならないはずだ。本人にしたらそれほどの喜びはないと思うが、風が吹けばこれだけの記録が出るという体験ができたのはプラスとなる。追い風であろうがなかろうが、どんな条件でも9秒台を出せる選手が世界のファイナリストになれる資格を持つ。追い風参考であれば当たり前のように常に9秒台を出し、気持ち的にも慣れていってほしい。

 昨年あたりから桐生、山県、ケンブリッジら日本人上位選手は「条件」と「体調」さえ整えば、いつでも9秒台を出せると思っていた。火山の噴火のように現在はマグマが地下にたまっている状況で、一度誰かが突破してしまえばどんどん結果は噴出するはず。2人同時に達成する日も近いかもしれない。

 ただし、記録は狙いすぎると出ないもの。あくまでも自分の走りを完成するためにレースに臨んでほしい。そうすれば、おのずと掲示板には10秒00以上の記録が表示されるだろう。 (男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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2017年4月17日のニュース