稀勢「鑑真の教え」心に精進誓う 海難屈せず来日「不撓不屈の精神」

[ 2017年2月13日 05:30 ]

「東山魁夷・唐招提寺御影堂障壁画展」見学

祝賀会会場内を、ファンの祝福を受けながら歩く稀勢の里(中央)
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 新横綱が唐の高僧の精神を学んだ。第72代横綱となった稀勢の里は12日、茨城県水戸市の県近代美術館で開催されている「東山魁夷・唐招提寺御影堂障壁画展」の関連イベントに参加。障壁画は幾多の困難を乗り越えて中国から来日した鑑真にささげるために制作されたもので、稀勢の里は鑑真の不撓不屈(ふとうふくつ)の精神に自分の生きざまをダブらせた。

 奈良時代の日本律宗の開祖と2000年代に初めて誕生した日本出身横綱。関連のなさそうな2人が、戦後を代表する日本画家の障壁画によって交わった。唐の高僧だった鑑真は要請されて来日を試みたが、海難などにより5度失敗。その間に失明しながらも初渡航から12年後となった6度目に来日を果たした。東山氏が10年もの歳月をかけて描いた歴史的大作を鑑賞した稀勢の里は、その後のトークショーで鑑真の「不撓不屈の精神」について話題が及ぶと、実感を込めて語った。

 「時間がかかってもやり遂げないといけないというのは、自分にも学ぶべきものがある」

 似たような境遇だからこそ、その言葉には重みがある。初場所で初優勝と横綱昇進という悲願を達成したものの、綱獲りは過去に5度失敗していた。鑑真は来日後に唐招提寺を開基するなど、歴史に名を残した。稀勢の里にとって昇進はあくまでスタート。「これからが大事」と改めて肝に銘じた。

 トークショーは昨年のうちに企画された。その後に横綱昇進が決まり、主催者は大混乱を避けるため事前告知を避けたが、12日は約700人が詰めかけた。綱獲り失敗が続いた間には琴奨菊、豪栄道に初優勝で先を越されたが「悔しい気持ちはあったが自分は自分という気持ちでやった。遅かったけどこういう結果になってよかった」とファンの前で語った。

 「不撓不屈」は第65代横綱・貴乃花が大関昇進の伝達式の口上で使った言葉でもある。貴乃花はその言葉を胸に闘い続け、優勝22回の大横綱となった。稀勢の里が新横綱として迎える春場所(3月12日初日、エディオンアリーナ大阪)。偉大な先人たちと同様に、どんな困難が立ちはだかろうと自分を信じて土俵に上がる。

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