暁斗逆転で2季ぶり金 上位3人不参加で「勝つのは最低ライン」

[ 2017年2月12日 05:30 ]

ノルディックスキー W杯複合個人第19戦 ( 2017年2月11日    札幌市大倉山ジャンプ競技場ほか )

ゴール直前、優勝を確信して観客に視線を向けた渡部暁
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 ソチ五輪銀メダリストの渡部暁斗(28=北野建設)が2季ぶり、通算8勝目を挙げた。前半飛躍(HS137メートル、K点123メートル)で134・5メートルの122・5点で4位と出遅れたが、トップと25秒差でスタートした後半距離(10キロ)で追い付いて3人でトップ集団を形成。1周2・5キロの最終周で引き離した。渡部剛弘(23=ガリウム)が前日10日の第18戦に続き2戦連続で7位に食い込んだ。

 最後の直線で後ろを振り返った渡部暁が、優勝を確信して観客に右手人さし指で“No・1”を見せた。「数字が1つ積み重なっただけ」と振り返るW杯通算8勝目だが、自国開催では初めての優勝。前日10日はドイツ選手との壮絶なデッドヒートの末わずか0秒7差で優勝を逃したが、日本のエースがしっかり存在感を見せつけた。

 久々の頂点の喜びはあるが、今大会は個人総合3位までを独占するドイツの3選手をはじめ海外の上位選手は多くない。「勝つのは最低ラインだと思っていた。勝てないというのは、僕のパフォーマンスを出し切れていない」ともどかしさがあった。この日は前半飛躍で失敗し、トップと25秒差で2・5キロを4周する後半距離を迎えたが、序盤に追い付いて3人で先頭集団を形成。渡部暁が主導権を握り、最終周のロングスパートで2人を揺さぶり、最後に突き放した。

 開幕前の体調不良などもあり、今季序盤は走りの調子が上がらなかった。シーズン中に体重増を図り、現在は2キロ増の61キロ。「生み出せるパワーが上がってスピードが乗るようになった」という実感がレースに生きている。

 この日は自らレースを支配して勝ったといえ、頭の中には不在だった海外の上位選手の姿がよぎる。「彼らならどれぐらいで走るのか、仕掛けるのか。もう少しスピードを出さないと彼らには勝ちきれない」。だからこそ、まだ満足はしていない。

 世界選手権(22日開幕、フィンランド・ラハティ)前最後のW杯を優勝で締めくくった。「メダル争いに絡めると証明できた」。エースが手応えを胸に、ライバルとの勝負に挑む。

 ◆渡部 暁斗(わたべ・あきと)1988年(昭63)5月26日、長野県白馬村生まれの28歳。3歳からゲレンデスキーを始め、白馬北小4年からジャンプを始める。白馬中から本格的に複合を始め、白馬高、早大を経て、北野建設所属。五輪には白馬高2年時の06年トリノ、10年バンクーバー、14年ソチと3大会連続出場。ソチで個人銀メダルを獲得した。1メートル73、61キロ。

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