小平 日本新でプレ五輪制す 大会史上初日本女子個人V

[ 2017年2月11日 05:30 ]

スピードスケート世界距離別選手権第2日 ( 2017年2月10日    韓国・江陵オーバル )

女子500メートルで優勝した小平奈緒(中央)。左は2位の神谷衣理那、右は3位の辻麻希
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 来年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪のテスト大会として行われ、女子500メートルで今季W杯で出場6レース全勝の小平奈緒(30=相沢病院)が37秒13の日本新記録で優勝した。日本女子の今大会個人種目制覇は史上初で、国内大会を含めて今季出場した500メートルで10戦全勝とした。同種目で36秒36の世界記録を持つ五輪2連覇中の李相花(イ・サンファ、27=韓国)は2位。最大のライバルに快勝し、1年後の五輪金メダルへ弾みをつけた。

 ゴールをした瞬間、小平は自分自身が出した記録が分かっていなかった。「電光掲示板が分からなくて。目も悪いので」。場内のどよめきを聞きながらリンクを半周すると結城匡啓コーチに「37秒13だ」と言われて初めて日本新だと知った。そこでようやく右拳を握って控えめにガッツポーズ。4年前にソルトレークシティー(米国)の高地の高速リンクで自身が出した記録を0秒16更新し、個人種目では初の日本人世界女王となった。今季W杯出場6レース全勝の30歳は「うれしい気持ちはある。平昌五輪に向けて最高のシチュエーションができた」と1年後に同じ会場で行われる五輪へ、大きな手応えをつかんだ。

 リスクを恐れず、挑戦している。今季W杯の前半戦。五輪で4つのメダルを手にしている米国のスター選手、シャニー・デービス(34)から結城コーチに対し「新しい刃の靴があるから奈緒も試してみては?」と提言があった。昨年12月上旬、同コーチは刃を開発したオランダの「バイキング社」に出向き購入。1月2日に初めて履いた小平は練習を重ねる中で「この刃が好きかもしれない」と感覚を持った。当初、今季は使う予定はなかったが「自分の体の柔らかさを生かせる」と年明け初戦のW杯ベルリン大会からの投入を決断。結果は今季最高記録で連勝した。続く今大会は「スタートは出遅れた」と序盤は後れを取りながら後半に盛り返して日本新。「刃の違いは大きい。使いこなせればもっと良くなる」とさらなる伸びしろを感じている。

 期待されたソチ五輪でメダルなしに終わり、スケート王国のオランダに単身武者修行。現地の牛乳と卵が合わずアレルギーを起こし、昨季は調子を落としたが「メンタリティーは強くなった」と2年間で自らを見つめ直した。今季から拠点を日本に戻し、食生活も改善。「今は差があっても来季はそうじゃない」「来年に36秒台を出せるように練習したい」。苦い経験を経て成長した今だからこそ分かる。この日2位だった五輪2連覇中の李相花らライバルとの本当の勝負は、これから先の365日だということを。

◆小平 奈緒(こだいら・なお)1986年(昭61)5月26日、長野県茅野市生まれ。伊那西高から信州大を経て09年から相沢病院に所属。10年バンクーバー五輪は女子団体追い抜きで銀、1000メートル、1500メートルで5位に入賞。14年ソチ五輪は500メートルで5位。14〜15年シーズンのW杯女子500メートルでは総合優勝を飾った。1メートル65、61キロ。

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2017年2月11日のニュース