忘れちゃいけないスピース メジャーでは躍進松山、トーマスの“壁”に

[ 2017年2月1日 09:00 ]

調子を上げているスピース(AP)
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 【福永稔彦のアンプレアブル】世界の男子ゴルフ界では若手2人が大きな注目を浴びている。24歳の松山英樹と23歳のジャスティン・トーマス(米国)のことである。

 松山は昨秋から日本ツアーやツアー外競技を含め4勝を挙げている。トーマスはSBSチャンピオンズ、ソニー・オープンと2週連続優勝。開幕から出場5試合で3勝というタイガー・ウッズ以来の快挙を成し遂げた。2人は世界ランキングで初のトップ10入りを果たし、4月のメジャー初戦マスターズでも優勝候補に挙げられている。

 ただ躍進する2人の影に隠れているが、調子を上げている大物がいることも忘れてはいけない。23歳ながら既にメジャー2勝を誇るジョーダン・スピース(米国)だ。

 スピースは年明けにハワイで開催された2試合でともに3位に入った。SBSチャンピオンズでは4日間で全選手中最多の26バーディーを奪い、平均パット数1・683は全体の1位。ソニー・オープンでは4日間で全体1位のパーオン率86・11%を記録した。オーガスタに向けて存在感は増す一方である。

 元世界ランキング1位のスピースにとって昨季は不本意なシーズンだった。2度優勝したとはいえ、マスターズと全米オープンを含む5勝を挙げ、賞金王やプレーヤー・オブ・ザ・イヤーなどタイトルを総なめにした15〜16年のシーズンと比べれば寂しい印象であることは否めない。そして大舞台で味わった屈辱が、そのネガティブなイメージをより色濃くしている。

 ディフェンディングチャンピオンとして出場したマスターズ。初日から首位に立ったスピースは1打差で最終日に臨み、前半でリードを5打差に広げて独走態勢に入った。ところが10番と11番で連続ボギー。そして12番パー3では2度も小川に打ち込んで「7」をたたき首位から陥落。自滅で連覇を逃した。

 スピースはこの悪夢を払拭するための「儀式」を行った。昨年12月、オーガスタでラウンド。12番では2日連続でバーディーをマークした。1日目は8Iで4・5メートルに乗せるとジャストタッチでカップに沈めて両手を上げて喜んだ。翌日は左サイドのピンを9Iで攻めて1メートルに付けてバーディーを奪った。そして同伴競技者にこう言った。

 「魔物は追い払った」。マスターズには過去3度出場し2位、優勝、2位。オーガスタとの相性の良さは今さら語る必要もない。調子が上がっている上に厄払いも済ませたとなれば本命になる。

 ちなみに英国のブックメーカー「ウィリアムヒル」のマスターズ優勝オッズではジェーソン・デー(オーストラリア)、ローリー・マキロイ(英国)と並ぶ9倍で最も低く、松山(13倍)、トーマス(26倍)よりも評価は上。メジャー初制覇を目指す松山、トーマスにとって手ごわい相手になることは想像に難くない。(専門委員)

 ◆福永 稔彦(ふくなが・としひこ)1965年、宮崎県生まれ。宮崎・日向高時代は野球部。立大卒。Jリーグが発足した92年から04年までサッカーを担当。一般スポーツデスクなどを経て、15年からゴルフ担当。ゴルフ歴は20年以上。1度だけ70台をマークしたことがある。

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