伊藤有希 「サンキュー」2勝 沙羅の50勝また阻止

[ 2017年1月21日 05:30 ]

W杯ジャンプ女子第9戦・蔵王大会 ( 2017年1月20日    HS103メートル、K点95メートル )

<ジャンプワールドカップレディース蔵王大会・初日>優勝した伊藤(中央)は表彰台で笑顔を見せる
Photo By スポニチ

 22歳の伊藤有希(土屋ホーム)が悪条件の中で89・5メートル、94メートルと2回ともに安定したジャンプを見せ、213・6点でW杯2勝目を飾った。14日の第7戦で初優勝を飾った勢いそのままに日本開催でまたもその名をとどろかせた。W杯通算50勝目を目指した高梨沙羅(20=クラレ)は85メートル、95メートルの208・3点で5位に終わり、3戦連続で優勝を逃した。21日も同地で第10戦が行われる。

 悪条件の中でも、きっちりと結果を残したところが“本物”になった何よりの証拠だ。蔵王の夜空から大粒の雪が降りしきり、視界も悪くなった1回目。W杯2勝目を狙う伊藤は自身にとって不利となる追い風0・88メートルを受けていた。それでも「どんな状況でも自分は自分と集中した」と飛距離では上から5番目となる89・5メートルでまとめて3位発進。2回目も「やることは変わらなかった」とK点間近の94メートルを飛んで全体2位の得点を出し、一気に首位に立って残す2人の結果を待った。「はらはらしたけど、条件が重なって優勝できました」。伊藤に続いて飛んだマルシーネル(イタリア)をわずか0・3点差で振り切った。

 「2本ともK点を越えることができなかったが、優勝できてうれしい。今日のビブスが39番だったので“サンキュー”ということで感謝を伝えられたらなと思います!」。優勝会見では箱根駅伝で青学大の原晋監督が掲げた“サンキュー大作戦”をマネする余裕を見せた。「ジャンプの内容は札幌の方が良かったし勝ち方も札幌の方が気持ち良かったです」と言いつつも、22歳のヒロインに最高の笑顔がはじけた。

 14日から始まった国内4連戦のうち3戦が終わり、優勝、2位、優勝と抜群の結果を残した。これまで世界のトップを走り続けてきた2歳年下の高梨について、伊藤は「技術面もそうだし、気持ちの面でもぶれない」と尊敬のまなざしで見つめてきたが、国内シリーズでは完全に主役の座を奪った。

 同郷・下川町の大先輩であり、所属の土屋ホームの葛西紀明兼任監督(44)も「だんだん男子に近いジャンプをするようになってきた。最初からギュッと前傾姿勢で素早い組み立てができる世界の3、4人の中に有希がやっと入ってきている感じ」と成長を認める。永遠とも思われた「国内2番手」から、金メダル候補へ。18年平昌五輪へ、高梨との二枚看板はさらなる厚みを増している。

 ◆伊藤 有希(いとう・ゆうき)1994年(平6)5月10日生まれ、北海道下川町出身の22歳。4歳からジャンプを始め、下川小6年時の07年3月にはW杯より1つカテゴリーが下のコンチネンタル杯で日本勢最高の3位。下川商を経て4年前に土屋ホームに入社。W杯の表彰台はこの日で13度目(優勝2度、2位7度、3位4度)。父・克彦さんは元複合選手でW杯出場経験もあり、現在は下川ジャンプ少年団の指導者。母・真智恵さんは元アルペンスキー選手。弟・将充もジャンプ選手。1メートル61、47キロ。

続きを表示

2017年1月21日のニュース