新成人のみなさん 角界には30年以上も土俵にいる力士がいるんですよ

[ 2017年1月12日 09:00 ]

安美錦
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 【佐藤博之のもう一丁】大相撲の初場所が始まった。新年最初の本場所は、第2日曜に初日を迎えるのが通例。成人の日は00年から第2月曜となったため、だいたいは初場所2日目が祝日となる。そのため、力士は基本的に成人式に出席することはできない。関取で今年、新成人となったのは、今場所新入幕の東前頭12枚目・佐藤改め貴景勝(貴乃花部屋)と西十両5枚目・阿武咲(阿武松部屋)の2人。残念ながら2人とも成人の日は黒星となってしまった。関取最年少の貴景勝は成人の日について「全然考えていなかった。相撲界に入ったら関係ない」と言い切った。関取は既に一人前と言える地位だけに、祝福ムードなど感じさせなかった。

 「十年一昔」なら、20年前は二昔前。記者はちょうど二昔前の97年初場所に相撲担当としての“初土俵”を踏んだ。同じく、関取最年長38歳、西十両7枚目の安美錦(伊勢ケ浜部屋)も18歳だったその場所で新弟子検査に合格し、前相撲で初土俵となった。成人の日の2日目、安美錦は一回り下の26歳、剣翔と対戦し、強烈な左おっつけで相手の上体を起こしてからはたき込みを決めた。新年1勝を挙げたベテランは「勝ちはなんでもいいよね」と静かに喜んだ。デビューから丸20年について聞かれると「力士として成人できた。やっと一人前」と笑わせた。両膝の負傷、さらには昨年夏場所で左アキレス腱断裂を負っても土俵に上がり続けるベテランには、安美錦より11歳年上の記者も頭が下がるばかりだ。

 だが、上には上がいる。安美錦よりも先に角界入りして現役を続けている力士は20人。いずれも貴景勝が生まれた96年8月5日より前に初土俵を踏んでいる。最古参の東序二段30枚目・華吹(はなかぜ、立浪部屋)東序二段57枚目・北斗龍(山響部屋)は86年春がデビュー場所。現役最年長46歳の華吹、45歳の北斗龍は昭和から相撲を取り続け、二昔前どころか三昔前を知っている。

 他のプロスポーツは体力が落ちれば引退につながるが、相撲の場合、幾分体力がなくなっても気力さえあれば土俵に上がり続けることができるという側面もある(でも、まげが結えなくなると引退を余儀なくされますが)。華吹と北斗龍、それぞれがどこまで闘い続けるかに注目するのはもちろん、2人合わせて90歳オーバーという夢の取組が実現することを期待している。(専門委員)

 ◆佐藤 博之(さとう・ひろゆき)1967年、秋田県大曲市(現大仙市)生まれ。千葉大卒。相撲、格闘技、サッカー、ゴルフなどを担当。スポーツの取材・生観戦だけでなく、休日は演劇や音楽などのライブを見に行くことを楽しみにしている。

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2017年1月12日のニュース