下り神だ!日体大・秋山6区2年連続区間新 谷口の再来

[ 2017年1月4日 06:20 ]

第93回箱根駅伝 ( 2017年1月3日    箱根・芦ノ湖~東京・大手町 復路5区間10・6キロ )

日体大の6区・秋山清仁(左)は7区・城越勇星にたすきを渡す
Photo By スポニチ

 6区の山道は最初の4キロを上ると標高差840メートルの下り坂に突入する。全てを吸い込むような急傾斜。足にかかる負担も甚大だが、何よりも恐怖心が先に立つ。しかし、日体大の秋山は凡百の人間の本能とは無縁の存在だった。

 「技術以前に精神的なもので、下りを走るのがなぜか一番楽しい。気持ちが高ぶって元気になれる」。ジェットコースターは好きではない。だが箱根の山の絶叫系コースには、ノーブレーキで喜々として飛び込んでいった。渡辺正昭監督が「思い切りが良くて怖がらない。あとは乗り込み(スムーズに体重移動すること)が上手」と語る長所。高校時代の監督に「下りに向いている」と言われて6区に憧れを抱き、普段のジョグから坂道に合わせるような前傾を意識してきた。

 がっちりした上体を前のめりにして上下動を抑え込み、ロスなく路面を蹴り続ける。58分1秒は昨年の記録を8秒更新し、2年連続で大会唯一となる区間新。「箱根に出たこの3年間で最高の走りができた」とスタートの13位から前を行く選手を次々にかわし、山を下りきった時には7位に上がっていた。

 6区での2年連続区間新は6人目で、その中には日体大の先輩である91年世界選手権マラソン金の谷口浩美氏も含まれている。谷口氏の記録は現在と若干異なるコースで57分47秒(83年)だった。秋山も同じ57分台を目指し、わずかに届かなかったものの、主催者は「当時よりコースは約200メートル長い。それを考えれば谷口さんに匹敵、または上回る記録」と高く評価。MVPの金栗四三杯まで獲得した。

 その谷口氏とは昨年大会の後に食事に出かけた。偉大な先輩から「マラソンでも活躍してほしい」と激励され、教員志望だった秋山は新たな夢を抱いた。「下りを走ってマラソンに、という谷口さんの伝統を引き継げた。東京五輪を目指していきたい」。春からは愛知製鋼で競技を続ける。箱根の山を下った先には、ランナー人生の上り坂が待っていた。

 ◆秋山 清仁(あきやま・きよひと)1994年(平6)11月19日、東京都板橋区生まれの22歳。志村五中から陸上を始め、順天高で東京都大会5000メートル5位。日体大に進学し、箱根駅伝は2年で6区4位、3年で6区1位(区間新)。家族は両親と弟。俳優の山崎賢人は幼なじみ。高校の時から大会前は験担ぎでパスタを食べる。元日の夜から5食連続パスタでレースに臨んだ。自己ベストは1万メートルは28分55秒61、ハーフが1時間3分3秒。1メートル69、57キロ。

続きを表示

2017年1月4日のニュース