湘南の神現る!秋山3区2年連続区間賞 青学大往路3年連続制覇

[ 2017年1月3日 05:30 ]

第93回箱根駅伝 ( 2017年1月2日    東京・大手町~箱根・芦ノ湖、往路5区間107・5キロ )

3区でトップに立った青学大・秋山はガッツポーズで平塚中継所に向かう
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 “山の神”はいなくても“湘南の神”がいた。青学大が5時間33分45秒で往路3連覇を飾り、史上初の総合3連覇と大学駅伝3冠の同時達成に王手をかけた。湘南海岸沿いなどを駆ける3区(21・4キロ)で、秋山雄飛(4年)が2年連続区間賞の快走でトップに立つと、そのまま逃げ切りに成功。2位・早大とは33秒差だが、3日の復路にも強力なメンバーが控え、偉業がはっきりと見えた。

 指揮官はもう、総合優勝を確信している。往路優勝後のインタビュー、原晋監督の声が晴れ渡る箱根の空に響いた。「サンキュー!」。箱根3連覇&大学駅伝3冠が懸かる今大会は自身9度目のタクトで、掲げたテーマは「サンキュー大作戦」。決めぜりふの「サンキュー」は事実上のV宣言だ。「あ、まだ早い?フライングしました、すいません」と苦笑いを浮かべたが、「往路優勝はうれしい誤算」と余裕を漂わせた。

 昨年まで2年連続で山上りの5区を務め、“山の神”と呼ばれた神野大地(現コニカミノルタ)が卒業。今年、神がいたのは、山ではなく海だった。湘南海岸沿いを駆ける3区。トップの神奈川大と38秒差の2位で発進した秋山が、13キロすぎに先頭に立った。2年連続区間賞の力走。テレビ解説を務めた神野は言った。「“湘南の神”になったね」。秋山は答えた。「神に言ってもらえてうれしいです」。絶不調を乗り越えた4年生が、チームに貢献した。

 16年春はどん底に転落した。4月の5000メートルでは陸上人生でワーストという16分25秒。7月のミーティングでは、安藤主将に「このままじゃ、後輩は誰もおまえについていかない!」と厳しい言葉をかけられた。ぜんそくと診断され、調子は上がらず10月の出雲、11月の全日本とメンバーには入れなかった。メンタル面が課題で、「沈んでいる時はとにかく沈んでいる」と言う。弱い自分を支えたもの。それは「自分もチームに貢献したい」という思いだった。

 最後の箱根を前にしても、原監督が「500%無理」と言う状況。12月中旬、秋山は5000メートルの練習で凡走し、翌日の16キロ走はウオーミングアップもせずに参加。モチベーションはなかったが、「意外と走れて開き直った」と好転すると、トレーナーに「フィジカルは問題ない」と太鼓判を押されて急上昇だ。12月29日の区間エントリーに滑り込み、たどり着いた夢舞台。「みんなが支えてくれてここにいる。“サンキュー大作戦”は大成功です!」と笑った。

 3日の復路は、1万メートルで青学大史上最速(28分18秒31)の田村和希(3年)、昨年8区区間賞の下田裕太(3年)が、補欠から当日のメンバー変更で投入される。原監督は戦前、3区の秋山が不安でチーム状態を示す“サンキュー指数”を39%としていた。「往路は100点。“サンキュー指数”も93%に上がった。ゴールでは139%を目指して頑張りたい。復路にも、強い速いランナーがいる」。ライバルを突き放し、大学駅伝界に金字塔を打ち立てる。

 ◆秋山 雄飛(あきやま・ゆうひ)1994年(平6)5月2日、兵庫県生まれの22歳。須磨学園高から青学大に進学。国際政治経済学部4年。昨年の箱根駅伝は3区で区間賞を獲得した。ニックネームは「秋山隊長」。1万メートルの自己ベストは28分58秒93。卒業後は中国電力に入社し競技を続ける。1メートル78、60キロ。

 ▼箱根3連覇と大学駅伝3冠 箱根の3連覇以上は中大の6連覇(59〜64年)、日体大の5連覇(69〜73年)、日大(35〜38年)、順大(86〜89年)、駒大(02〜05年)の4連覇がある。出雲、全日本、箱根を同一年度に優勝する大学駅伝3冠は90年度の大東大、00年度の順大、10年度の早大が達成。青学大は史上6校目の箱根3連覇と、史上4校目の3冠が懸かるが、同時達成は史上初となる。

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