元ハードル女王・寺田明日香 サクラセブンズの起爆剤となれるか

[ 2016年12月30日 10:30 ]

7人制ラグビー女子日本代表のトライアウトで40メートル走を行う元陸上100メートル障害の寺田明日香
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 サクラセブンズの起爆剤となれるか。

 12月23日に埼玉県熊谷市で行われた7人制ラグビー女子日本代表のトライアウト。参加者13人中、異彩を放っていたのが陸上の100メートル障害で08〜10年の日本選手権を3連覇している寺田明日香(26)だった。トライアウトで実施されたのは40メートルスプリント、立ち幅跳び、片脚スクワット、20メートルシャトルランの4種目。リオデジャネイロ五輪で金メダルに輝いたオーストラリア代表でも、選手の基礎能力を測るために実施している4種目で、いずれも非凡な数字を残した。特に40メートルスプリントに関しては、見守った稲田仁ヘッドコーチ代行が「オーストラリアの一番速い選手よりも上だと思う」と評したほど。100メートル11秒71の自己ベストは伊達ではない。

 陸上時代は3年連続日本一という頂点に上り詰めながらも、11年以降はケガに苦しみ、摂食障害などの精神疾患にも悩まされたという。13年6月、現役を引退。実はこの後、ラグビーを始めるきっかけを与えられている。

 同郷の北海道出身で、大学卒業後に陸上からラグビーに転向していた桑井亜乃(リオ五輪代表)から「一緒にラグビーをしようよ」と誘われていたという。ただ、当時の寺田に次の道へ進もうとするだけの気力はなかった。最終的には桑井と直接会った際、大泣きしながら「無理だよ」と断ったという。それほど五輪という舞台を踏めないまま、陸上を離れた精神的ダメージは大きかったのだろう。

 その後、結婚。すでに13年9月には20年東京五輪の開催が決まっており、「子どもと一緒にオリンピックを見たい」との思いから、14年8月に長女・果緒ちゃん(2つ)を出産した。計画通りに第2の人生を歩み始めていた今年8月、夫とテレビ観戦していた五輪の女子ラグビーをきっかけに、再びアスリート魂に火が付く。10位と惨敗した大会全体を通じ、寺田が感じたことは「日本には足の速い選手がいなかった」。少々刺激的な言葉とも受け止められるが、陸上で頂点を極めている人間からすれば、正直な感想だったのだろう。そして、決断する。「子どもと一緒に見るんじゃなくて、見せたいと思った」。

 9月に東京フェニックスの門を叩き、すでに所属クラブでは試合にも出場している。始めた当初、47キロだった体重は54キロに。転向者にとっては不慣れなタックルなどのコンタクトプレーも「出産が痛くて。あれ以上の痛みはないと思ってます」と急速にラグビープレーヤーとしての道を駆け上がっている。

 一芸だけでは日本代表は務まらない。超一芸ならどうか。もちろん、その他の部分は伸びしろだらけ。20年に向け、面白い存在であるのは間違いない。(阿部 令)

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