東京五輪の目標メダル数は82個 果たして実現の可能性は

[ 2016年12月28日 09:30 ]

銀座で行われたリオ五輪のメダリストパレード
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 【藤山健二の独立独歩】先日、日本オリンピック委員会(JOC)の選手強化本部長を務める橋本聖子氏と話をする機会があった。本来の取材の目的は他にあったが、ちょうど政府が来年度予算案を閣議決定する数日前だったこともあり、自然と東京五輪へ向けての話になった。来年度のスポーツ関連予算は前年度より10億円増え、過去最高の334億円。直接選手強化に直結する競技力向上事業にはそのうち92億円が充てられる。

 この金額が高いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、橋本氏は「予算の増額は20年へ向けての追い風になる。これを確実に質の高いトレーニングにつなげなくては」と前向きだ。その上で「同時にコーチの育成にも取り組む。ナショナルコーチの枠を増やし、海外のコーチの招聘も含め、互いに学び合いながら選手の質も高めていく。医科学面でもしっかり連携し、最先端のスポーツ医科学で選手の強化を進める」と続けた。選手に比べて指導者に対する支援が遅れていることは以前から多くの関係者が指摘してきたことで、予算増に伴って待遇改善が進めば大きな進歩だ。

 JOCは東京大会で「金メダル数世界3位」を目標に掲げている。そのためには30個近い金メダルが必要になるが、橋本氏はそれに加えて「全競技でメダルを獲る」という壮大な目標も明かしている。新たに追加された5競技を含め、現時点での実施予定競技は33。もちろん柔道や体操、レスリングなどはメダル量産が期待されるので「総数でリオの倍増も不可能ではない」ことになる。リオでのメダル総数は41個だから、東京では82個。とてつもない数字だが、橋本氏は本気だ。

 現役時代はスピードスケート選手として短距離から長距離まで全種目を滑るオールラウンダーにこだわり続け、1日5万メートルも滑り込むなど精神主義の権化のような存在だったが、だからこそ「今の選手にはあんなバカなことはさせられない」という。選手が努力するのは当たり前だが、努力だけでは勝てないことも自身が一番よく知っている。一人の選手が世界と対等に戦えるようになるまでには金もかかるし、医科学面でのサポートも欠かせない。今はそういう時代なのだ。

 64年東京五輪の聖火に感動した父によって「聖子」と名付けられたのは有名な話。現役時代のような根性論が聞けなくなったのは残念だが、最後に「実は(選手団長として参加した)リオでも聖火を見ながら、こっそり涙を流していたんですよ」という話を聞いて、なぜかほっとしてしまった。五輪に対する熱い思いは今でも少しも変わってはいない。4年後の東京で自分の分身とも言える聖火を目にした時、「五輪の申し子」がどんなリアクションをとるのか今から楽しみだ。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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