64年ぶり出場の山口 “古き良き時代の部活動”文武両道全国に示す

[ 2016年12月15日 16:07 ]

27日開幕・全国高校ラグビー

山口フィフティーンの前で話をする大畑大介氏(右)
Photo By スポニチ

 第96回全国高校ラグビー大会が27日に花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で開幕する。大会を先取りして、話題の学校や注目の選手を2日連続で取り上げる。第1回は長い沈黙を破って復活した久々出場のチームと、初出場校をピックアップ。全国にたどりつくまでの取り組みを聞いた。国際統括団体「ワールドラグビー」の殿堂入りを11月に果たした大畑大介さん(41=神戸製鋼アンバサダー)が64年ぶり出場の山口(山口)を訪問した。

◆1870年創立 OBに岸信介ら

 1870年創立。歴史は140年を超える。OBには岸信介、佐藤栄作の両首相らそうそうたる人物の名が並ぶ。安倍晋三首相の父、安倍晋太郎もその一人だ。ラグビー部は1930年に創部。部員不足など近年の低迷期を乗り越え、64大会ぶりの出場をつかんだ。

◆練習1日2時間 グラウンド共有

 平日の練習は午後4時から2時間。終了後は大半の部員が塾へ行ったり、教室に戻って勉学に励む。グラウンドはサッカー部、野球部、陸上部との共有だ。マネジャーを含む44人の部員は限られた時間と場所で効率よくメニューをこなす。文武両道の秘けつとは−。自身もOBで現役時はSOで活躍した就任9年目の中江洋平監督は「(練習を)やりすぎないこと。普通の高校生活をさせるんです」と説明する。

 練習を視察した大畑氏もこの考えに大きくうなずく。「競技だけに特化しない、古き良き時代の部活動といった印象です。学業と部活のバランスはどちらかの比重が大きくなると、一方が小さくなると思っていましたが、山口高校は違う。“両方、頑張ることが格好いい”と言う部員が多かった」。SH鹿取は1メートル53、51キロ。「彼は小柄ですが、ラグビーで得た達成感が勉強に生きているのでは」と推察した。

 その鹿取は京大工学部志望だ。毎日、楕円球を追う一方で「毎朝5時起きで勉強しています」と胸を張る。ロック白石は東大志望だ。高い目標は推進力を生み出す。大畑氏の「総理大臣を目指す人は?」の問い掛けに、はにかみながら手を挙げた部員も一人いた。

 41、48、53年の大会に出場したが、その後は大津(現・大津緑洋)や萩商工などの壁に阻まれてきた。2010年には部員が7人まで減少した。指揮官は「そりゃあ、ひたすら勧誘。半ば強引に連れてくることもありました」と話す。入学式直後は部活の練習時間を削って勧誘に乗り出す。2時間に限る練習の短さも文武両道を志す学生には魅力的に映る。練習見学には複数の中学生もいた。初戦は富山第一戦(28日)。大畑氏は「一過性ではなく、いい循環が続くのでは」と結んだ。

続きを表示

この記事のフォト

2016年12月15日のニュース