競技施設の早期完成を 選手にとって東京で五輪を開く一番の利点とは

[ 2016年12月14日 09:15 ]

新国立競技場の起工式で点灯スイッチのオブジェに手を合わせる安倍首相、丸川大臣、小池知事ら
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 【藤山健二の独立独歩】設計のやり直しなどで遅れていた新国立競技場の工事がようやく始まった。当初は昨年10月に着工する予定だったので約1年2カ月の遅れで、完成も19年5月から半年遅れの同年11月末にずれ込む。とはいえ大規模工事は途中でさまざまなトラブルが起きて遅れるのが常なので、果たしてこの工程通りに行くかどうかは微妙だろう。

 今回の東京五輪ではこの新国立競技場の他にも、宮城への移転などで話題となった海の森水上競技場や五輪水泳センターなど新設される会場が多い。バレーボールもおそらく新設の有明アリーナで決まりだろう。これらの施設は最悪の場合、五輪開幕までに完成すれば間に合うし、実際に今夏のリオデジャネイロ五輪では直前に完成した施設やインフラも多かった。しかし、運営する方にしてみれば事前に何度かリハーサルが必要なので、さらに早い完成が望ましい。そして一番完成時期を気にしているのが、これらの施設で実際に競技をすることになる選手や指導者たちだ。

 過去の五輪で毎回開催国のメダルが多いのは強化費の増額などで集中的に選手強化を図るからだが、もう一つ、ホームの利点、つまり競技会場の特徴を知り尽くしているということがある。たとえば今話題になっているバレーボールならコートからスタンドまでの距離、床の滑り具合や照明の位置、明るさ、空調の風向きや強さなど、施設の特徴を事前に徹底的に研究して対策を立てる。以前話を聞いたある女子選手によれば、スタンドの観客がどの季節に何色の服を着て来ることが多いのかまで調べ上げたという。ボールがスタンドの背景色と混ざり合うことで損や得があるのかないのか、そこまで考えなくては世界とは戦えない。これはバレーボールだけでなく卓球やバドミントンなど屋内競技はみんな同じだし、体操のように器具が大切な競技もある。屋外競技も同様で気温や風、湿度の変化や潮の流れなどのデータを蓄積して、それに合わせたトレーニングを取り入れる。これらの情報はその施設で普段から練習をし、何度も試合をして初めて手に入るものであり、海外から来る選手はそうはいかない。これこそがホームで五輪を開く一番の利点なのである。

 アスリートファーストと言いながら、競技会場にまつわる話は経費のことばかりで「一日も早く作ってもらわないと何のために日本でやるのかわからない」という選手たちの生の声はあまり届いていない。もちろん金がなければ五輪はできないので経費削減が最優先なのは当然だが、工期を短縮するための新技術や資材もどんどん取り入れてほしい。それこそが技術大国・日本の見せどころではないか。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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