沙羅 新鳥人だ!ニッカネン超えW杯単独歴代2位47勝

[ 2016年12月12日 05:30 ]

ノルディックスキー W杯ジャンプ女子第4戦 ( 2016年12月11日    ロシア・ニジニタギル=HS100メートル、K点90メートル )

W杯ジャンプ女子個人第4戦で優勝した高梨沙羅(中央)
Photo By 共同

 昨季総合女王の高梨沙羅(20=クラレ)が“鳥人”を超えた。92・5メートル、98・5メートルの合計250・7点で今季3勝目。1回目の4位から2回目に最長不倒をマークして逆転勝利を収めた。W杯での勝率が最も低く、鬼門ともいえるロシアでW杯通算47勝目を挙げ、ジャンプの男女を通じてマッチ・ニッカネン(フィンランド)を抜いて単独歴代2位となった。

 着地を決めた高梨は両手をちょこんと突き上げた。顔半分がゴーグルに隠れていても、口元だけでそれと分かる笑顔。「ホッとしました」。緩斜面が近づいて危険とされるヒルサイズ付近まで距離を伸ばし、逆転で優勝をさらった。

 ウラル山脈の麓にあるニジニタギルのジャンプ台は、助走路が緩やかなカーブを描く。荒れた天候だった10日の第3戦は、不安定な風に翻弄(ほんろう)されて2回目に86メートルと大失速。首位から3位に落ち、よもやの逆転を許した。それでも「(ジャンプ台の)感覚はつかめていた。自分を信じて飛ぶしかないと思った。開き直った」とこの日は迷うことなくスタート台に向かった。

 ジャンプに不利な追い風だった1回目は、踏み切りのタイミングもやや遅れて4位。追う立場で臨んだ2回目は最長不倒の98・5メートルを飛んだ。「難しい条件の中で、最後の最後までやるべきことに集中できた」。きれいな空中姿勢を維持して飛型点も稼ぎ、トップとの4・2点差をものともせずひっくり返した。

 1980年代に活躍し「鳥人」と呼ばれた男子のニッカネンを抜き、W杯通算勝利数は歴代単独2位の47となった。記録については「うれしいし、自信にもつながることだと思うけど、同じ土俵ではない」と謙虚に話した。

 国際スキー連盟(FIS)の公式サイトによると、現役選手の登録人数は女子が約350人、男子は約1000人と選手層は大きく異なる。引退選手まで広げれば、その差はもっと大きい。1979年からの長い歴史を持つ男子W杯。2011年に始まり、黎明(れいめい)期から徐々に成長している女子W杯。一概に比較できないとはいえ高梨もまた不世出の“鳥人”であることは間違いない。年内のW杯はこれで終了。シュリーレンツァウアー(オーストリア)のW杯最多53勝も視界に捉え、高梨の戦いは2017年へと突入する。

 ◆マッチ・ニッカネン 1963年7月17日、フィンランド生まれの53歳。W杯ジャンプは81年に17歳で初優勝を果たし、89年まで通算46勝。13年にシュリーレンツァウアー(オーストリア=通算53勝)に抜かれるまで歴代最多だった。総合優勝4回は最多タイ。五輪は84年サラエボ大会90メートル級個人で金メダル。88年カルガリー大会は70メートル級個人、90メートル級個人、90メートル級団体と3冠達成。フィンランドの国民的英雄で、日本では「鳥人」と呼ばれた。キャリア終盤の92年に歌手デビュー。引退後は飲酒問題を抱え、04年と09年に殺人未遂、05年に暴行で実刑判決を受けた。

続きを表示

この記事のフォト

2016年12月12日のニュース