日本代表・朴監督 あえて“桃田問題”を語った理由

[ 2016年11月9日 10:54 ]

日本記者クラブで会見したバドミントン日本代表の朴柱奉監督

 今夏、リオデジャネイロ五輪で日本のバドミントン界は空前の盛り上がりを見せた。女子ダブルスの高橋礼華、松友美佐紀組が日本史上初の金メダルを獲得し、女子の奥原希望がシングルスでは日本初のメダルとなる3位となった。その躍進を支えた日本代表の朴柱奉(パク・ジュボン)監督が7日に都内の日本記者クラブに招かれ、記者会見を行った。

 興味深い話がたくさんあったが、我々記者たちが身を乗り出してメモを取ったのは、女子に比べて低調だった男子の話題に及んだ時だった。朴監督は、今年4月に違法賭博問題が発覚して、無期限出場停止処分となり、リオ五輪に出場できなかった男子シングルスの元エース、桃田賢斗について自ら語り出したのだ。「ここで話をするのはつらいことですが、桃田が不祥事で出場できなかったことは本当に残念でした」とあらためて無念の思いを吐露した。そしてこう続けた。

 「今は深く反省して、所属チームで練習に励んでいると聞いています。もし人間的に成熟し、バドミントンの世界に戻ってくることができるのなら、日本の男子はメダルに近くなるし、20年東京五輪でもメダルの可能性があると思います」。

 4月の問題発覚後、バドミントン界には桃田の話題に触れることを避ける空気があった。リオ五輪後も、金メダルの快挙に水を差すようで、桃田の話題を持ち出しにくい雰囲気が続いた。そんな中で、朴監督が公式の会見の場で桃田問題について切り出した。そこには大きな意味があったと思う。

 トップアスリートはどうあるべきか。同じ過ちを繰り返さないために、選手や指導者、関係者に対し、いま一度見つめ直す必要があるというメッセージがその一つだ。そして、もう一つは、桃田本人へのメッセージ。再起を待っている、と。

 朴監督は現役時代、92年バルセロナ五輪で男子ダブルスで金メダル、96年アトランタ五輪では混合ダブルス銀メダルを獲得した。15歳から16年間韓国代表で活躍し、その後指導者に転じた「名選手にして名監督」だ。だからこそ、才能ある若い選手の育成についても厳しい意見を述べた。

 「天才と呼ばれる選手も、誠実さ、努力、人格面を兼ね備えていなければ、世界的な実力を維持できない。早く花開いて、早く散る選手もいる。選手たちを正しい方向に導いていきたい」。

 現在、日本バドミントン協会は朴監督との20年東京五輪までの契約延長を協議中で、12月にも正式に続投が決まる見込みだ。一方、桃田は処分解除の見通しはたっておらず、いつ試合に復帰できるかは未定だ。ただ今週末には熊本地震復興イベント(12日熊本市、13日益城町)に参加する予定。今後は社会貢献活動などを通じて反省の姿勢を示していくことになる。復帰へ向けた第一歩となりそうだ。

 桃田はまだ22歳。散った選手ではない。20年東京五輪の指揮官は、男子エースの復活を信じている。(柳田 博)

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2016年11月9日のニュース