日本人の国際体操連盟会長就任がもたらしたもう一つの可能性

[ 2016年10月24日 09:10 ]

国際体操連盟の次期会長選に当選し、喜ぶ日本協会の渡辺守成専務理事
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 【藤山健二の独立独歩】国際体操連盟(FIG)の新会長に、日本体操協会の渡辺守成専務理事が就任することになった。国際競技団体(IF)は各国の競技団体(NF)を統括し、世界選手権やW杯の開催地を決めたり、競技ルールの変更などを行う。さらに五輪では競技会場の選定や出場資格の認定などにも大きな役割を果たす。これらをIFの会長一人が決めるわけではないが、渡辺氏が就任すれば少なくともルール改正などの際に日本の意向が通りやすくなることは間違いない。それだけでも今回の渡辺氏の就任は価値があるが、もう一つ重要なのが、渡辺氏には国際オリンピック委員会(IOC)の委員になるチャンスがあるということだ。

 IOC委員には70歳定年制があり、現在82歳のブルーノ・グランディ会長が70歳になった04年以降、FIGからIOC委員は出ていない。そのためFIGは新会長をあらためてIOC委員に推薦する意向を持っているとされ、57歳の渡辺氏がIOC委員になる可能性は高い。

 IOC委員の定員は115人。1カ国1人が原則(過去の五輪開催国は2人まで)で各国五輪委員会(NOC)の会長が多数を占めるが、その他にもIF会長枠や選手委員会枠などさまざまな枠がある。そのため日本は竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長1人なのに対し、バッハ会長の母国ドイツや米国、英国、中国などは3、4人ものIOC委員を擁し、組織内において大きな発言力を有している。ここに渡辺氏が加われば日本にとって大きなプラスになることは確実だ。

 しかも渡辺氏の本職はイオンリテール(本社・千葉)のスポーツ&レジャー事業本部長で、ビジネスには長けている。今回の会長選挙でも水面下で積極的にロビー活動を展開し、8代続けて会長職を独占してきた欧州勢に大勝した。これまで竹田会長1人の日本はロビー活動などに不慣れで情報不足に陥ることが多かっただけに、表に出ない部分での戦略的な効果も見込める。

 日本はすでに4年後の東京五輪開催が決まっているが、今後も冬季五輪の招致や実施種目の承認など重要な投票は何度も行われる。特に東京での復活が決まっている野球・ソフトボールや新たに採用された空手などが東京後も実施されるのかどうかなど現時点では不透明なことも多いだけに、IOC委員が増えれば心強い。たかが1票、されど1票。渡辺氏のIOC委員就任を期待したい。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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