豪栄道は“ダメ大関”なのか?稀勢の里はどうなのか?

[ 2016年10月4日 08:30 ]

秋場所全勝優勝で内閣総理大臣杯を受け取る豪栄道(左)
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 【佐藤博之のもう一丁】大相撲史上初のカド番全勝優勝を成し遂げた大関・豪栄道が、秋場所の一夜明け会見でこんなことを話した。

 「1つ結果を残せたんですけど、これで終わるとまた“ダメ大関”と呼ばれますから。これからが大事ですね」

 ダメ大関。好成績を収められない大関に対して用いられる言葉だ。豪栄道のコメントからすると、優勝するまではダメ大関と言われても仕方なかったということになる。確かに、今年名古屋場所までの在位12場所はひどい成績だった。最高成績は12勝(今年春場所)だが、2桁勝利はこの一度きり。負け越しが4度あった。全勝優勝を加えても、大関通算は108勝86敗1休み。勝率・557は、1場所平均約8・3勝という低い数字だ。

 でも、そんなことはどうだっていい。九州場所で連覇を果たせば、横綱に昇進できる(現時点で具体的な昇進ラインは出ていないが)。仮に全勝優勝なら、大関勝率・589。過去に大関勝率6割未満(1場所平均9勝未満)で昇進したのは三重ノ海(・594)だけ。作曲家の都倉俊一氏は26日の横綱審議委員会を終えた後、全勝優勝した豪栄道の相撲を「昔の三重ノ海みたいだ」と評したが、同じような成績で最高位に上り詰める可能性が出てきた。千載一遇のチャンスは逃すわけにはいかない。

 豪栄道が賜杯を抱いたことで、現在の4大関で優勝がないのは稀勢の里だけとなった。15日制が定着した1949年夏場所以降に誕生した大関67人のうち、大関昇進以前も含め1度も優勝がないのは稀勢の里ら13人。優勝決定戦進出もなかったのは、在位7場所で81年春場所に引退した増位山までさかのぼらなければならない。

 では、稀勢の里はダメ大関なのか。記者の見解は「ノー」だ。大関在位29場所で、負け越しは1回だけ。大関通算勝率は・703で、1場所平均10・5勝以上。稀勢の里自身が「大関の勝ち越しは10勝」と捉えている数字をクリアしているだけでなく、横綱に昇進していない大関では現時点で最高勝率を残している。審判部の友綱副部長(元関脇・魁輝)が「足りないのは優勝だけ」と話していたように、優勝がないことを除けば、むしろ“最強大関”と言ってもおかしくない。

 秋場所千秋楽、豪栄道が表彰式を終えて支度部屋に戻って来たとき、稀勢の里はマゲを直しながら報道陣に対応していた。そして「もっともっと強くなっていくだけ。結果を残さなければいけない」と言い切った。今年初場所の琴奨菊の初優勝の後に稀勢の里は好成績を挙げ続けた。今回の豪栄道の優勝が、再び稀勢の里の闘志に火をつけるのか。10月5日から始まる秋巡業、そして11月の九州場所。“最強大関”の動向に注目していきたい。(専門委員)

 ◆佐藤 博之(さとう・ひろゆき)1967年、秋田県大曲市(現大仙市)生まれ。千葉大卒。相撲、格闘技、サッカー、ゴルフなどを担当。スポーツの取材・生観戦だけでなく、休日は演劇や音楽などのライブを見に行くことを楽しみにしている。

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