郷土の後押しでよみがえった闘志 終わらないベテラン豪風の挑戦

[ 2016年9月10日 10:06 ]

 【佐藤博之のもう一丁】大相撲の世界で30歳を超えればベテランと呼ばれるようになる。だが、力士寿命が延びた現在は幕内力士42人中、17人が30歳以上(今年秋場所終了時)。その割合は40%を超えている。私が小学2年生だった1975年(昭50)、このころから相撲を見始めたが、大関・貴ノ花が2度目の優勝を飾った同年秋場所の幕内力士36人中、30歳以上はわずか6人だった。割合は約16・7%。角界も随分と“高齢化社会”になったものだ。

 37歳8カ月の史上最年長優勝記録を持つ旭天鵬(現大島親方)が昨年7月場所後に40歳で引退してからは、幕内最年長は安美錦だった。その安美錦は今年夏場所にアキレス腱を断裂し、11日初日の秋場所は十両で迎える。代わりに幕内最年長となったのが、西前頭9枚目の37歳、豪風(尾車部屋)だ。

 私と同じ秋田県出身で、いわゆる“くにもの”だ。金足農高で相撲を始め、中大4年で学生横綱となった。02年夏場所に幕下15枚目格付け出しで初土俵。幕内在位は秋場所で77場所となり、学生相撲出身で最多の雅山(現二子山親方)の82場所に迫っている。35歳1カ月だった14年名古屋場所9日目には横綱・日馬富士を倒し、年6場所以降での最年長初金星となった。翌秋場所は戦後最年長の新関脇昇進。1メートル71と現役関取で最も小兵だが、重心の低い立ち合いからの突き、押しで幕内の座を維持している。

 今月5日に二所ノ関部屋で行われた二所ノ関一門連合稽古では、小結・魁聖らに8連勝するなど、衰え知らずのところをアピールした。「まだまだ体の方はやれる」。目立った故障もないだけに、37歳はそう言い切る。一方で「体は大丈夫だが心の方が。何をモチベーションにすればいいのか」と考えることもあったという。そんな時、8月16日に故郷の秋田で行われた夏巡業で、秋田県民栄誉章を授与された。相撲での活躍だけでなく、地元での福祉活動なども評価されての受章だったが、これが発奮材料につながった。

 部屋や自宅が近かったことで親しくしていた横綱・白鵬からは「私はモンゴルの国民栄誉賞を受賞しました。これ(県民栄誉章受章)が終わりじゃない。これがスタートです」と言われたという。横綱からの言葉を聞き「県民栄誉章に恥じない相撲を取らなければ」という思いが湧いてきた。そして「4年後の東京五輪までは取りたい」と思えるようになった。

 目標の一つに三賞受賞も加わった。「いいねえ、三賞。獲れるように頑張りたい」。新たな目標を見つけ、ベテランの挑戦は続いていく。(専門委員)

 ◆佐藤 博之(さとう・ひろゆき)1967年、秋田県大曲市(現大仙市)生まれ。千葉大卒。相撲、格闘技、サッカー、ゴルフなどを担当。スポーツの取材・生観戦だけでなく、休日は演劇や音楽などのライブを見に行くことを楽しみにしている。

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