【松岡修造の目】圭だからできた「東京タワー」第2サーブ予測

[ 2016年9月7日 07:17 ]

<全米オープンテニス>ファンの声援に手を振って応えながらスタジアムを後にする錦織圭

テニス全米オープン第8日 錦織 6―3、6―4、7―6 カロビッチ

(9月5日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 圭の良さは天下一品の予測力にある。勝因は2つあって、まずは自分のサーブで相手の“予測”を裏切れたこと。バックで待っていると思ったら体をめがけたり、狙いを絞らせなかった。そこが一番うまかった。

 もう一つは相手のサーブを予測できたこと。2メートル11の長身から打ち下ろしてくる第1サーブはまるでスカイツリー(高さ634メートル)。普通の選手なら第2サーブは通天閣(100メートル)になるが、カロビッチの場合は東京タワー(333メートル)の迫力があった。今大会は70%近い得点率だった相手の第2サーブ。圭だから47%に抑えられた。

 カロビッチのサーブの後なら、A・マリーのサーブは間違いなく簡単に返せる。これは大きなアドバンテージだ。圭にはリオ五輪で守っちゃった、無理した、戦わなかったという悔しさが凄く残っている。話を聞く限りでは、今回は我慢して攻める準備ができている。

 具体的には第1サーブはスライスやキックを使い、エースは狙わない。確率重視でストローク勝負。選手からしたら嫌な選択だが、それをしないとA・マリーは崩せない。リオ五輪でも単発ではできていたが続かなかった。第1サーブが入らず、第2サーブを叩かれてどんどん根気がなくなっていったからだ。

 試合を見ている人は1ポイントを取るのがこんなに大変なんだと思うかもしれない。それなら圭にとってはいい展開。今大会のA・マリーは間違いなくジョコビッチよりも難しい相手だが、圭には長くしんどいラリーを続けて、5セットを戦い抜く覚悟ができている。楽しみになってきた。 (スポーツキャスター)

続きを表示

2016年9月7日のニュース