桐生10秒08!ミスターほうふつ「スーと行ってバーン」

[ 2016年9月4日 05:30 ]

男子100メートルで優勝した桐生

陸上日本学生対校選手権第2日

(9月3日 埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)
 男子100メートル決勝に出場した桐生祥秀(20=東洋大)が大会新の10秒08(追い風1・1メートル)を出して連覇を果たした。従来の記録は00年川畑伸吾(法大)の10秒11。男子400メートルリレーで銀メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪後初めての大会を好記録で締めくくった。桐生は4日は200メートルの準決勝、決勝に臨む。

 天才肌に多くの言葉は必要ない。10秒08のぶっちぎりのタイムで優勝した桐生が好記録の要因を解説した。その表現は、どこかで耳にしたことがあるような表現だった。

 「言葉では自分でもよく分からないけど、スーと行ってバーン。中間を意識したら力んでも伸びる感じ」

 プロ野球巨人の長嶋茂雄終身名誉監督が擬音語を使って打撃を表現したのは有名な話。それをほうふつさせるイメージのつくり方で今大会に入った。ポイントは中間で力を最大限発揮すること。以前は逆。特に予選落ちしたリオ五輪は同組のボルトを気にして「前に出ないといけないと思ってスタートを意識しすぎた」。今週は、“バーンと行ってスー”から“スーと行ってバーン”に変更したのだ。

 予選10秒26、準決勝10秒12、決勝10秒08と階段を駆け上がったのは、その擬音語効果。それも、決勝は土江コーチが「2歩目で浮き上がった」と指摘したミスがありながら好記録だった。

 終始リラックスしていたのも進境著しい。土江コーチは「外部をシャットアウトするためでなく楽しむために音楽を聴いていた」と変化を感じていた。リオで仕入れたジャマイカ式のウオーミングアップも試した。短いダッシュ後にマッサージを受ける、というのを繰り返す方法だ。五輪の財産を帰国初戦でしっかり生かしていた。

 「オリンピアンとしてのプライドがある。負けられない気持ちだった」

 レースの合間にはサイン攻めにあった。400メートルリレー銀メダルの五輪フィーバーを象徴していた。今季最終戦となる13日の国別対抗戦「デカネーション」(フランス)、9秒台へと夢が広がる。陸上界のミスターになる日は、そう遠くない。

続きを表示

2016年9月4日のニュース